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第14話 写真

ユルは手の甲で涙を拭った。

結婚式と宮殿の地図を見つめていた。

副官たちは食事へ行っている。

ユルには食欲がなかった。

法律も。

制度も。

破らずにアレックを救わなければならない。

今のところ。

言うほど簡単ではなかった。

これまでで一番まともな案は。

巨大なウェディングケーキの中へ隠れることだった。

どういうわけか。

花嫁は何段にも重なった巨大なケーキを注文している。

参加人数で割って考えれば。

あれほど大きなケーキは必要ない。

中に空洞を作ることができる。

ユルが。

ちょうど収まるくらいの空洞を。

そこまでは。

洗練された。

少し可愛らしくすらある案だった。

だが。

法的な問題があった。

食品取扱規則では。

腐敗を防ぐため。

食品をアクイフェル度36を超える環境へ置いてはならないと定められていた。

つまり。

却下。

もっとも。

現地の料理人たちは。

温度問題の解決策を教えてもらえたことを大いに喜んだ。

本来ユルが入るはずだった場所へ。

氷を詰めるらしい。

ユルはもう。

自分を逮捕しに来る部隊をあしらうことにも飽き始めていた。

最初は。

オロスなら手強い相手になると思っていた。

だが特殊部隊司令官が思いつくのは。

結局。

同じ作戦の変形ばかりだった。

一度たりとも。

「コバルト」の野営地へ近づけていない。

通常巡回隊を「コバルト」の逮捕へ向かわせれば。

現地にいる全員がコバルト階級だと判明する。

彼らを逮捕できるのは特殊部隊だけ。

そして。

特殊部隊の巡回隊が向かえば。

どれほど避けようとしても。

途中でごみに遭遇する。

第5条第28節によれば。

ごみは衛生上の感染危険度1類に指定されているため。

無視することはできない。

そこで彼らは引き返し。

報告書を作成しなければならなかった。

そうなるたび。

逮捕命令は処理完了となる。

そして。

最初からやり直し。

もちろん。

ユルはごみを捨てているわけではない。

第175条に基づいて。

樹木へ肥料を与えているだけだ。

誰にもそう説明していないだけで。

特殊部隊が帰ったあと。

ユルと「コバルト」はごみを埋める。

実際。

肥料になる。

最近では「コバルト」同士で。

穴を掘る仕草をしながら挨拶する遊びまで始まっていた。

その日。

ユルを逮捕するためにやって来た。

いつも陽気なナク。

オラクが声をかけてきた。

「ユルさん。まだアレックさんを助ける方法が見つからなくて落ち込んでるんですか? 意地悪しないでくださいよぅ。私が帰って特殊部隊に仕事をしてもらえるよう、書式を書いていただけませんか?」

「ええ、オラク。ケーキ作戦は失敗だったわ」

「温度の問題ですか?」

このナクは。

妙に勘のいいことを言う。

それも。

一度や二度ではなかった。

「ねえ。前から不思議だったんだけど。どうして行政官にならなかったの? どうして軍人を選んだの?」

「うちは昔からずっと軍人の家系なんですよ」

「でも、あなたが行政官になってはいけないという法律はないでしょう?」

「でも母ちゃんが悲しみます」

ユルは。

その答えにうなずいた。

そして書式へ記入しながら。

結婚式場の模型を眺めた。

正式な入口はない。

合法的に自由に入る方法もない。

フリアンが提案した。

投石機を使う案を少し考えた。

自分が空を飛び。

そのあと市場の果物みたいに。

地面へ叩き潰されるところを想像した。

却下。

アレックは救いたい。

だが。

そのために規則を破るつもりはない。

舞台を見つめた。

どうやって。

あの高さまで上がるのだろう。

模型をよく見る。

どこにも。

上へ行く方法がない。

必要なのは。

梯子。

ユルの動きが止まった。

オラクを見る。

そして。

抱きしめた。

「梯子!」

オラクは。

抱き返すべきか。

逃げるべきか。

真剣に迷っていた。

「ユルさん。これは非常に異例です」

ユルは抱きしめたまま。

彼を見た。

「でも、法律には違反してない」

その言葉を聞くと。

オラクは安心した。

そして。

ユルを抱き返した。

しばらくして。

オラクは押印済みの書式を持って立ち去った。

副官を探し。

二枚目の写しを受け取らなければならない。

そうすれば。

帰宅へまた一歩近づける。

ユルは。

満面の笑みで。

せわしなく歩き回っていた。

「カルメラ」

大きな声で呼ぶ。

一分ほどすると。

書式へ記入しながらカルメラがやって来た。

その後ろには。

もう完全に帰りたそうな顔をしたオラク。

「お呼びですか?」

青い羽根の耳飾りをつけたナクは。

書類をオラクへ渡した。

オラクは。

プロトコルが許す限界の速さで立ち去った。

「梯子よ」

ユルは。

興奮を隠さず言った。

カルメラは彼女を見る。

模型を見る。

そして。

微笑んだ。

「お見事です。さすがです」

ちょうどそのとき。

フリアンが入ってきた。

オラクとその小隊が撤収すると報告するためだった。

二人をしばらく見て。

言った。

「もう、どうやって入るかわかったんだろ?」

「梯子を使う……」

フリアンは。

その答えに笑った。

ユルは。

その法律を一字一句覚えていた。

こう書かれている。

手持ち式の梯子を運搬するすべての者には、自由通行および即時の協力が与えられなければならない。上層構造物にとって明白に重要な作業に従事しているものと推定されるためである。

そして。

さらに素晴らしいことに。

どのような状況で梯子を運んでよいのかを定めた法律は。

一つも存在しない。

全員が。

梯子を持てばいい。

ユルは想像した。

プロトコルどおり。

正装した「コバルト」全員が。

梯子を一本ずつ手に持ち。

厳粛な顔で歩いている姿を。

小柄なカルメラなど。

特に滑稽なことになる。

ユルは。

笑い始めた。

カルメラとフリアンは。

何が起きているのかわからず。

彼女を見つめた。

途中。

カルメラはフリアンに。

医者を呼んでくるよう頼みさえした。

ユルは。

必要ないと手で合図した。

そして。

突然。

見たこともない部屋にいた。

少なくとも。

建築規則を百三十ほど違反している。

火気使用区域に関する規則を数えなければ。

だが。

ユルが座っているのは木のベンチ。

目の前には。

一人の男がいた。

その顔を知っている。

この世界に存在する。

唯一の彫像。

その顔だった。

カアシュ。

ユルは彼を見るなり。

反射的に立ち上がった。

「閣下」

背筋を。

ぴんと伸ばす。

カアシュは笑った。

「そんなにかしこまらなくて結構ですよ、ユル。あなたと話す必要があって、ここへお連れしました」

「私はどうやってここへ来たのでしょうか、閣下?」

カアシュは片手を上げ。

自分がはめている手袋を示した。

最高行政官の手袋。

「あなたなのですか?」

「ええ。ですが時間がありません。あなたには、受け入れていただかなければならないことが二つあります」

そう言いながら。

カアシュは何かを焼いていた。

丸い書式を折り畳んだようなもの。

中には。

白い何かが入っている。

「アレックを救うためなら、あなたはどこまでできますか?」

「あなたを彼のところへ届けるための計画を立てています」

カアシュは。

それをフライパンから取り出した。

中へ緑色の果実らしきものを入れる。

そして。

ユルへ差し出した。

「アレックは、ほとんど毎晩これを食べていました」

匂いを嗅いだ瞬間。

ユルの腹が鳴った。

唾液が出る。

「どうやって食べるのですか?」

カアシュは微笑んだ。

「面白いことに、手で食べるんですよ」

ユルは。

折り畳まれた紙のようなものを手に取った。

柔らかい。

口元へ運び。

一口かじる。

紙の味は。

しなかった。

体の中が。

温かくなった。

気づけば。

わずかに頭を揺らしている。

踊っているように。

公式の食事とは。

まるで違う。

「中に入っているのは何ですか?」

カアシュは。

ナプキンを差し出した。

ただし。

紙でできている。

「チーズとアボカドです。この果物はエルティデールには存在しません」

ユルは。

一口一口を味わいながら。

食べ続けた。

「二つあるとおっしゃいました」

話が終わっていないことを。

忘れてはいなかった。

カアシュは。

奇妙な場所の中を歩き始めた。

どう見ても。

家だ。

ユルは。

紙の上にある。

信じられないほど精密な絵に気づいた。

これほどの精度を実現した者には。

並外れた技術があるに違いない。

その一枚には。

笑っているアレックがいた。

口髭のある男性が彼を抱き。

金髪の女性が。

アレックの髪をくしゃくしゃにしている。

「写真です。ここが彼の家です。彼はここに住んでいます。この人たちが彼の家族です」

写真。

細部まで。

信じられないほど鮮明だった。

ユルは。

小さなアレックが。

白髪の多い女性を抱きしめている一枚を手に取った。

立ったまま。

じっと見る。

「これは……最高行政官ではありませんか?」

カアシュは。

女性を指差した。

「この女性は、神のように料理がうまいんですよ」

ユルは家の中を見回した。

色で満ちている。

絵もある。

カアシュとは。

違う感じがした。

法律の隙間を見つけたときの。

あの感覚に似ている。

「アレックは、私を驚かせた最初の最高行政官です。ですが、私たちはこれ以上ないほど正反対です」

ユルは。

写真の中のアレックを指で撫でていた。

「では、なぜ私をここへお連れになったのですか?」

写真を見つめたまま。

そこにいるアレックは。

まだ子どもだった。

だが。

乱れた金髪も。

その目も。

今と同じ。

「私は混沌を消そうとしました。芸術をなくそうとしました。そして何世紀ものあいだ、この世界は灰色でした。暴力はない。ですが、魂もない」

「閣下は、この世界に存在した中で最も進歩的で、最も先見の明を持った方です」

ユルはそう言いながら。

写真を元の場所へ戻した。

「だからあなたは、法律の隙間を見つけるのがあんなに好きなのですか?」

ユルは床を見た。

「制度の欠陥を見つけるのが。好きなのかもしれません」

「そこです。あれは生命です。混沌です。そして、私がどれほど否定したくても。芸術です」

ユルはカアシュを見た。

二人は。

しばらく見つめ合った。

「私が芸術家だと。そうおっしゃっているのですか?」

カアシュは彼女を見た。

ユルは眉間に皺を寄せ。

顎を強張らせている。

「わかりません」

少し間を置く。

「あなたは、そうなのですか?」

カアシュが一歩進む。

次の瞬間。

二人はサルバトーレの執務室にいた。

今よりずっと若いサルバトーレが。

書式を確認している。

ふと。

一枚を手に取った。

紙の縁いっぱいに。

飾り模様が描かれている。

ナクは。

微笑んだ。

その光景の中にサルバトーレを見つけた瞬間。

ユルは。

触れようとせずにはいられなかった。

手を伸ばす。

その手は。

映像をすり抜けた。

ユルは。

ポケットへしまっていた紙ナプキンで涙を拭いた。

そして。

突然。

床に座っていた。

カルメラが。

彼女を見ている。

「医師を呼びました。何をしても反応がありませんでしたので」

ユルは体を起こした。

「わかった」

全身検査を受けなければならない。

それはわかっていた。

健康より上に立つ者はいない。

自分がやっていることは。

制度と遊ぶこと。

制度へ挑むこと。

——だが。

規則を破るときに感じる、あの感覚ほど。

ユルを強く呼ぶものは。

なかった。

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