第17章 「合体暴君を駆逐せよ!」
董卓に苻生、それに張献忠。
悪名高い三人の暴君の魂が入り混じった悪のエネルギー体は、決して世に出してはならない危険な存在だった。
何としても、今この場で葬り去らなければならないよ。
「我が崑崙仙軍の名にかけて…否!この世の正義の名にかけて、奴を必ずや駆逐せねばなりません!」
「敵は三大暴君の悪霊の集合体、即ち三つの力を一つにした存在です。この場に集う我々もまた然り。崑崙仙軍の葛葉舒さんに京洛牙城衆の私、そして人類防衛機構の吹田千里少佐。この三つの力を一つにするのです。」
「やりましょう、お二人さん!理性を失ったばかりか個人の人格すら溶け合ってしまった彼奴等に、私達三人の連携の力を見せてやりましょうよ!」
こうして私こと吹田千里少佐は此度の「EMプロジェクト」の総決算をするかのように、崑崙仙軍の葛葉舒さんと京洛牙城衆の深草伊奈利さんの二人と力を合わせて悪を討つ事になったんだ。
「やってやる…やってやる!私はサイバー馬賊として、あの大物を狩ってやるんだから!」
そう叫びながら、私は軍用オートバイである地平嵐一型のエンジンを起動させたんだ。
鉄の愛馬の嘶き声は、実に頼もしいよ。
そうして一気に加速した私の機体は、暴君のエネルギー体には最優先で排除すべき標的として認識されたみたい。
「グオオオ!」
両目の破壊光線だけでなく、冕冠から発射する雷光や両掌から発射するエネルギー光弾まで駆使して、私を葬ろうというんだからね。
「手数を増やして来やがったな…だったらこっちも!来い、戦闘ドローン!」
負けじと私もレーザー砲搭載の戦闘ユニットに換装したドローン部隊を呼び出し、全方位攻撃を仕掛けてやったの。
当然ながら私自身も、レーザーライフルで牽制を試みているよ。
脳波コントロールでドローンを操りながらオートバイを乗り回し、更にレーザーライフルを用いた牽制射撃。
見事なまでのマルチタスクだね。
多機能ヘルメットに搭載されたAIの補助があるから、それなりに様にはなっているけど。
こうして私が囮役を引き受けている間に、日中の霊能者二人も準備を整えられたみたい。
「胡媚殿、与次郎殿。この深草伊奈利、御力をお借りします。飯綱招魂、人狐合神!」
掛け声と同時に取り出した竹筒から二匹の管狐が開放され、伊奈利さんを囲むように宙を舞う。
そして次の瞬間には伊奈利さんの身体に次々と入り込み、赤い女袴の裾から生えていた銀色の尻尾が更に二本追加されたんだ。
もう六本生やせたなら、九尾の狐になれるだろうね。
後で落ち着いたタイミングで聞いてみたら、「一族の長である大御所様なら出来ますが、私は未熟者なので今は三本が限界です。」って言われちゃったけど。
その「大御所様」と呼ばれている深草花之美さんって人は、狐憑きの中でも相当な力の持ち主なんだろうね。
噂じゃ明治時代から生きているらしいし。
「崑崙道術秘技、葉舒道体!覇っ!」
そして崑崙仙軍の女性道士も、準備が出来たみたいだね。
あの半透明に輝く葉っぱのエネルギー体を全身に降り注がせて、今や身体全体が緑色のオーラに包まれているじゃない。
「行きますよ、崑崙の!」
「心得ました、嵐山の!」
そうして阿吽の呼吸で飛び上がり、殆ど同時に鯉口を切ったんだ。
「飯綱招魂、白狐刀!」
「崑崙道術秘技・九字斬魂!」
青白い炎を揺らめかせる日本刀が、緑色のオーラを纏った環首刀が、邪な紫色のオーラをザックリと両断する。
そうして切り裂かれた悪霊のエネルギー体の裂け目から垣間見えたのは、ほとんどミイラみたいに干からびた紅露共栄軍の首魁の身体だったんだ。
そしていよいよ、真打ちである私の出番だね。
「レーザーライフル、高出力モード!」
スコープを覗き込んで照準を合わせて、引き金に掛けた指へ力を加える。
銃身が伝える確かな重量感と、引き金を引く時の静かな緊張感。
それはレーザーライフルを扱う防人の乙女としての醍醐味と言えたね。
空気が焼ける独特の芳香は、レーザーライフルで銃撃する時には付き物だ。
この重量感。
この緊張感。
そして、この芳香。
どれもこれも、実に堪えられないよ。
「撃ち方、始め!」
個人兵装であるレーザーライフルの銃口から飛び出した真紅の光線が、合体暴君のコアとなった肉体に命中して全身を白熱させる。
そして次の瞬間には、消し炭と化して砕け散ってしまったんだ。
「悪鬼退散!」
「成敗!」
それを見届けた二人の霊能者が静かに印を結び、グッと力を込める。
すると紫色の邪悪なオーラもまた、スウッと消えてしまったんだ。
「やりました!これで悪霊は浄化され、暴君の魂が蘇る事はないでしょう。」
「私達三人の一人でも欠けていたなら、決して成し遂げられなかった勝利です。」
晴れやかな顔をした二人を見ていると、私も嬉しくなっちゃうよ。
「やったぁ!これで紅露共栄軍は全滅だ!私達は勝ったんだよ!」
ついつい大声を上げちゃったけど、これ位は大目に見てよね。
何しろ私はここしばらくの間、「EMプロジェクト」に心血を注ぎ続けてきたんだから。
思えばこの数時間、色んな名前で呼ばれたなぁ。
紅露共栄軍の連中からは「偽王女」だの「ハイエナ」だの「ジャッカル」だのと散々な言われようで、京花ちゃんからは「チャイニーズマフィア」とか「サイバー馬賊」とか風変わりなニックネームをつけられたんだよね。
だけど作戦が成功した今となっては、それらも全て良い思い出だよ。
これで本当の意味で、私は「特命遊撃士・吹田千里少佐」に戻れたんだから。




