第15章「鉄の愛馬が血で描く軌跡」
そうして残る敵兵を一網打尽にするべく放った高出力の大技は射線上の全てを破壊し尽くしただけでなく、その延長線上にある壁面にまで大穴を開けてしまったの。
「あーあ、これはまた派手にやっちゃったなあ。ねえ見てよ京花ちゃん、あの大穴を。」
「別に良いじゃないの、千里ちゃん。どうせ何もかもぶっ壊すんだし。それより中をよく見てみてよ。ちょっと普通じゃなさそうだよ。」
どうやら穴の向こう側は、司令室と思わしき豪華で重厚な部屋になっているようだね。
これは敵の首魁が腰を据えていてもおかしくない雰囲気だよ。
「熱源反応は三つ、そのうち二つは活発に動いているか…」
多機能ヘルメットのバイザーに表示したサーモグラフィーを確認しながら、私は突入するか否かを検討していたの。
いずれにせよ、判断材料は多い方が良いからね。
「江坂佳乃准尉、天王寺ハルカ上級曹長!この場をお願いします。」
「はっ!承知致しました、吹田千里少佐!」
そこで私は部下達に付近の哨戒を頼みながら、小型ドローンのカメラアイを潜入させたんだ。
「おっ、伊奈利さんに葛葉舒さん!二人とも元気そうで何よりだよ!」
見慣れた巫女装束と漢服姿だけど、霊体だった頃は持っていなかった日本刀と環首刀を携えているよ。
この事から察するに、今回の二人は生身の本体みたいだね。
増援としてやってきた本体と合体したのかな。
「あっ、コイツは…」
そして先程の衝撃で吹き飛んだ瓦礫の下には、何とも憎々しくて酷薄そうな面構えの男が下敷きになっていたんだ。
あの下敷きになっていた男が、どうやら紅露共栄軍の首魁と見て間違いなさそうだね。
ああして指一つ触れずに瓦礫を粉砕しながら立ち上がった所を見るに、コイツもまた人並み外れた力を持っていると見て間違いなさそうだよ。
「この場にいる人員の中で加勢に行くなら、ちさが適任だろうな。霊能力者の御二人とは連携戦もやったんだろ。私達は敵の首魁が部下達と合流しないように周りを固めて置くからさ。」
「然りだね、マリナちゃん。それじゃ私、地平嵐一型で行ってくるよ!手が空いたら加勢に来てね。」
こうして私は多機能ヘルメットに搭載されたリモートコントロールシステムで武装オートバイを呼び出すと、片手ハンドルで一気に発進させたんだ。
馬の代わりにバイクへ騎乗するんだから、これでいよいよ私は正真正銘のサイバー馬賊だよ。
これが昔の西部劇だったら、騎兵隊になるんだろうけど。
無公害エンジンがグングンと加速し、私と地平嵐一型は一陣の疾風へと変わる。
人馬一体とはよく言うけれど、これは差し詰め人機一体だね。
この疾走感は堪らないよ。
「おっ!テロ屋の雑魚共ったら、命知らずにもかかってきたな…一人残らず前輪ホイールの錆にしてやろうじゃないの!」
その行く手を阻む敵兵は、全てあの世に送ってやったよ。
レーザーライフルで撃ち抜いて消し炭にするか、或いは前輪で五体を轢き潰してやるか。
基本的にはその二択だったね。
「テロリストと正規兵の格の違いって奴を見せてあげるよ!」
鉄の愛馬に跨って、サイバー馬賊が戦場を駆ける。
その通った軌跡に残るのは、敵の亡骸と血の川ばかり。
何とも詩的でロマンチックだよね。
「アッハハ!死にたい奴から寄って来なよ!」
まあ、立ち塞がる敵は問答無用で叩き潰すだけだよ。
そしてそれは、敵軍の首魁にしても例外ではなかったの。
「喰らえ、悪党!地平嵐・ダッシュアタック!」
「ぐおっ?!」
ウィリー走行でトルクをかけられた高速回転する前輪と、特殊素材製の頑丈なフロントカウル。
この両者による突撃の洗礼を浴び、邪悪な野望を抱いた男は苦悶の声を上げながら横向きに吹き飛んでしまったんだ。
こうやって賊軍を撥ね飛ばす高揚感は、何度やっても飽きが来ないんだよね。
そうしてけたたましいスキール音を響かせながら急ブレーキで停車した私は、今回の戦場で出会った新しい戦友達に笑いかけたの。
「加勢に来ましたよ、お二人さん!」
「おおっ、吹田千里少佐!」
一般道なら大事故間違いなしな惨事が目の前が起きているというのに、伊奈利さんも葛葉舒さんもまるで驚いた様子がない。
流石は日中が誇る霊能者の女戦士、そんなヤワな肝っ玉はしてないって事か。
実に頼もしい限りだよ。




