第十一話「一対一」
黒髪の少女を目にしたヤマザキさんは、彼女に向かって、「紹介しよう。俺の弟子の栄一くんだ」と言った。
彼女は栄一の目を見つめていた。何かを探るように、真剣な表情だった。
「二対一という訳?」
と少女は言った。しかしヤマザキさんは首を横に降る。
「君みたいな可憐な少女に、そんな卑怯なマネはしないよ。俺の代理さ」
ヤマザキさんは、自分の天然パーマをクルクルといじりながら、そう言った。
「代理?」
栄一は不安を拭いきれない様子で呟いた。
ヤマザキさんに呼ばれたので、慌ててここまでやってきたものの、自分にできることなど、たかが知れていると思っていた。
夜の風はいつまでも心地よく、草木の香りは月明かりに照らされて一層濃い。彼はこの奇妙な状況に困惑していた。
「ほらほら、栄一くん。この前波動拳、撃ったでしょう? 覚えてる?」
「波動拳? そういえば、俺についていた悪霊を除霊してくれたとき、そんなことやってましたね。平和の核爆弾でしたっけ?」
栄一はとぼけた様子で言ったが、ヤマザキさんは大喜びであった。
「そうそう、よく分かったねぇ。もう君はある程度使いこなせるようになったんじゃないか?」
栄一は自信は無かったが、ヤマザキさんのお墨付きということで、さっそく実践練習をしてみたい気持ちになったのだった。
「きみぃ、抱えてるよね。俺さぁ、分かるんだぁ、君みたいな目付きをしている人の悩みなんて、よく分かるさ。詰まるところ助けて欲しいんだろう」
ヤマザキさんは彼女に話し始める。
「君の暴走する邪気や呪いの力を、払えるくらい力の強い者を探しているんだろう。だから町で暴れ回って、君を退治してくれる正義の英雄の登場を心待にしてるってわけだ。」
ヤマザキさんは少女の目を見ながら、言った。彼女は、ハッとした表情になる。
「図星かい?」
とヤマザキさんは言った。
「そうよ。でも、それは私に勝てるほど、霊力の大きい英雄さんが登場して、初めて完結するの。どうせ私を止めてくれる人なんて、誰もいないから」
彼女は悲しそうに言う。
「名前を、教えてくれるかい?」
と栄一が言った。
「……レナ」
「そうか、レナさん。困っている女性を助けるのは、俺みたいな紳士の役目だ。全力をもって、君の邪気や呪いをねじ伏せてやる。覚悟はいいかい?」
「甘くみて後悔しないでね」
こうして、栄一とレナの霊力の勝負が始まったのであった。




