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第十話「手助け」

 


 熱い風呂から上がり、牛乳を飲んでいた栄一の元に、一通の着信があった。ヤマザキさんからであった。


「なんだろう、珍しいな」

 栄一はスマホを耳にあてる。


「もしもし、栄一くん? 実は急展開になっちゃってね。いま、女の子に追いかけられているんだ」


「おう、ヤマザキさんにも、ついにモテ期が到来したようで、良かったじゃないですか。おめでとうございます」


「いや、違うんだよ。ところがその女の子、人間なんだが強い霊力を持っていてね、俺に恨みがある訳ではなさそうなんだが、目を付けられてしまったんだ。急用で申し訳ない。栄一くんいま来てもらうことは可能かい?」


「えっ」

 彼は驚く。あのヤマザキさんが追い詰められる程の人物とは、いったい何者だろうかと思った。


「いや、無理にとは言わない。ただ、俺……公園のトイレに逃げ込んだんだ。映画でよくある展開だろ? 面白いと思ってね、あえて追い込まれるようなシチュエーションになってみたんだぁ」


 どうやら彼はこの状況を面白がっているようだ、と栄一は思った。面白い場面をこの目で見て欲しい、ということなのだろう。


「分かりました。向かいます。どこですか?」



 そういうことで、栄一はヤマザキさんの所へ足を運ぶこととなった。時刻は夜の9時頃をまわっていた。


 風呂上がりに夜風を受けるのは心地いいなと考えながら、彼は待ち合わせ場所の公園のトイレまで行く。


 例の妖しい少女らしき人の姿は見かけなかったが、彼は決して気を緩めることは無かった。


「やぁ、栄一くん。ごめんね、遅い時間に」

 突然後ろから声を掛けられ、彼は一瞬ヒヤリとしたが、ヤマザキさんは案外、余裕の表情だった。


「元気そうじゃないですか」

 と彼は言う。


「そうそう。実践練習と、いったところか?」

 ヤマザキさんはそう言って、栄一の後のほうへ目を向けた。そこには、綺麗な黒髪をなびかせた色白の少女がいた。






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