第九話「闘争」
人気の無い夜の道路であったため、二人は真剣に自分たちの霊能力を発揮することができた。
お互い、十メートル近くの間合いを取り、お互いが得意な霊能力をぶつけ合うのだ。
夜の不気味な風が、少女の黒髪を靡かせている。
「俺も、少し本気を出させてもらうからね」
ヤマザキさんの目は鋭かった。
「待っていましたよ。貴方のように、お強い力を持った殿方に出会えたこと……感謝申し上げます」
「じゃあ、始めようか」
「ええ、喜んで」
妖気、と言うべきか。辺り一帯が、凄まじく重い空気に包まれたのをヤマザキさんは感じた。
表現しにくい、圧倒的なプレッシャー。吐き気がするような強烈な緊張感……これをそのまま吸い込んだかのような邪悪な臭い、これが妖気というものだ。
「…………!?」
ヤマザキさんは、突如、自分の胸に複数の刃が突き刺さっているのを感じ、驚嘆した。
彼女は邪気を具現化し、一瞬のうちに自分の胸に突き刺して来たのだ。目にも止まらぬ速さに、彼は目を見張った。
「アッハッハ。さすが」
しかし、彼にダメージは無いようである。
「ふん!」と彼が力むと、今まで胸に突き刺さっていた邪気の刃は、たちどころに抜かれていった。
「お返しするよ。べっぴんさん」
彼は、お茶目な様子でそう言うと、少女は悲鳴をあげた。
今度は彼女の胸に、その邪気の刃は突き刺さっていた。彼なりの仕返しのようだった。
「……ふふふ、嬉しい。今までこんな強い方に出会えたことなんてなかった。ねぇ、もっと楽しみましょう?」
少女は不気味に笑っていた。楽しそうでもあり、それと同時にどこか救いを求めているようでもあった。




