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夫に「ただの主婦」と言われた私、実は誰かの人生を変えていた  作者: すみれ


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第67話 知らない横顔

ホテルに入ると、


ロビーにはすでに何組かの社員と家族が集まっていた。


「思ったより多いね」


私が小さく言うと、


彼は笑った。


「まだこれでも半分くらいかな」


受付へ向かう。


名前を伝えると、


担当の女性が名簿を確認して微笑んだ。


「ありがとうございます。こちらへどうぞ」


彼は軽く頭を下げる。


そして私の方を見て、


「妻です」


とだけ紹介した。


「初めまして。よろしくお願いします」


私も頭を下げる。


会場へ入ると、


すぐに何人かが彼に気付いた。


「お疲れ様です!」


若い男性が笑顔で駆け寄ってくる。


「今日は奥様もご一緒なんですね」


「ああ」


彼は少し照れたように笑う。


「初めまして」


男性は私にも丁寧に頭を下げた。


「いつもお世話になっています」


私は慌てて会釈を返す。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


少し話をしていると、


今度は別の社員が声を掛けてきた。


「部長がお呼びですよ」


「今行きます」


彼は私の方を見る。


「ちょっと行ってくる」


「うん」


そう答えると、


彼は人の輪の中へ入っていった。


私は近くの席に腰を下ろす。


少し離れたところで、


彼は次々と声を掛けられていた。


後輩らしい人が相談を持ってきたり、


同僚と笑いながら話したり。


家では見たことのない表情だった。


「奥様ですよね?」


隣に座っていた女性が話しかけてきた。


私は顔を向ける。


「はい」


「初めまして。経理の佐藤です」


「よろしくお願いします」


女性は穏やかに笑った。


「ご主人、会社ではいつもあんな感じなんですよ」


私は思わず彼の方を見る。


また誰かに呼び止められている。


「忙しそうですね」


そう言うと、


女性は笑った。


「みんな何かあると、まず声を掛けるんです」


私は少し驚いた。


家では仕事の話をほとんどしない。


だから、


こんな姿を見るのは初めてだった。


その時、


彼がこちらへ戻ってきた。


「待たせた」


「大丈夫?」


私が聞くと、


彼は苦笑する。


「始まる前だけだから」


ちょうどその時、


会場の照明が少し落ちた。


司会を務める社員が前へ出る。


「それでは、始めさせていただきます」


会場が静かになる。


私は背筋を伸ばし、


彼の隣に座り直した。

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