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夫に「ただの主婦」と言われた私、実は誰かの人生を変えていた  作者: すみれ


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第60話 少しだけ気になった

夕食を終えたあとだった。


私はキッチンで食器を洗っていた。


リビングではテレビが流れている。


夫はソファに座ったままスマホを見ていた。


いつもの夜。


最近はこんな時間が少し増えた気がする。


仕事を始める前は、


家事が終わっても何となく時間が過ぎていくだけだった。


今は違う。


一日があっという間に終わる。


「最近さ」


突然、夫が言った。


私は振り返る。


「なに?」


「疲れてない?」


思わず笑ってしまう。


「急にどうしたの」


「いや」


夫はスマホから目を離した。


「前より元気そうだから」


私は少し考えた。


そう言われると、


自分ではよく分からない。


「そう見える?」


「見える」


即答だった。


私は苦笑する。


「仕事してるからじゃない?」


「かもな」


夫はそう言ってテレビを見る。


それで話は終わったと思った。


でも数分後。


また夫が口を開いた。


「会社、楽しいのか」


私は少し驚いた。


こんなことを聞かれたのは久しぶりだった。


「楽しいっていうか」


少し考える。


「慣れてきたかな」


夫は黙って聞いていた。


「大変なこともあるけど」


私は続ける。


「家にいるだけじゃ分からなかったこともあるし」


夫は小さく頷く。


しばらく沈黙が続いた。


テレビの音だけが流れる。


その時だった。


夫がふと笑う。


「なんか変だな」


「何が?」


「結婚してこんなに経つのに」


私は首をかしげる。


夫は少しだけ考えてから言った。


「俺、お前の仕事してる姿って見たことないんだな」


私は思わず手を止めた。


言われてみればその通りだった。


働いていた頃も。


結婚してからは特に。


職場と家庭は別だった。


私は家で仕事の話をほとんどしなかった。


夫も聞かなかった。


だから、


お互い知っているようで知らないことがある。


「今さら?」


私は笑う。


夫も笑った。


「今さら」


短いやり取りだった。


でも不思議と嫌な気はしなかった。


夫は立ち上がり、


空になったコップを流しへ持っていく。


そして何気ない顔で言った。


「そういえば」


「うん?」


「来月、会社の集まりがあるんだ」


私は頷く。


「珍しいね」


「家族も来るらしい」


私は驚いた。


そんな話は初めて聞く。


夫は肩をすくめた。


「俺もよく分かってない」


そして少し笑った。


「来るか?」


私は返事をしなかった。


でも、


少しだけ興味が湧いていた。


夫の会社の人たち。


そして、


夫が普段どんな顔で働いているのか。


考えてみれば、


私も知らなかった。

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