表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夫に「ただの主婦」と言われた私、実は誰かの人生を変えていた  作者: すみれ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/64

第48話 約束

翌朝、


目覚ましが鳴る前に目が覚めた。


カーテンの隙間から朝の光が入っている。


隣を見る。


夫はもう起きていた。


私はしばらく天井を見つめる。


昨夜の手帳。


夫の誕生日。


思い出せなかった約束。


頭の中に残ったままだった。


リビングへ行くと、


キッチンからいい匂いがした。


夫がフライパンを振っている。


「おはよう」


私が言うと、


夫は少し驚いた顔をした。


「今日は早いな」


私は曖昧に笑う。


最近、


朝はいつも慌ただしかった。


起きる。


スマホを見る。


会社の連絡を見る。


それで終わりだった。


でも今日は違った。


私はテーブルにつく。


夫がコーヒーを置いた。


湯気が静かに上がる。


二人で朝食を食べる。


ただそれだけなのに、


どこか久しぶりだった。


食べ終わった頃、


夫がふと思い出したように言った。


「そういえば来月」


私は顔を上げる。


「結婚記念日だな」


一瞬、


言葉が詰まる。


去年は何をしたっけ。


思い出そうとして、


思い出せなかった。


夫は笑う。


「忘れたか?」


「忘れてない」


そう言いながら、


自分でも少し怪しいと思った。


夫はそれ以上何も言わなかった。


代わりに、


冷めかけたコーヒーを飲みながら言う。


「今年は飯でも行くか」


私は頷く。


「行こう」


今度は迷わなかった。


すると夫は少し笑った。


「じゃあ予約しとく」


その笑顔を見て、


胸の奥が少しだけ軽くなる。


会社へ向かう時間になる。


私は玄関で靴を履いた。


夫が後ろから声をかける。


「今日も遅い?」


私は答えに迷った。


今までなら、


当たり前のように


「分からない」と言っていた。


でも今日は違う。


「できるだけ早く帰る」


夫は少し驚いた顔をした。


それから、


小さく頷く。


「待ってる」


私は会社へ向かった。


電車に揺られながら、


何度もその言葉を思い出す。


待ってる。


昔は当たり前だった言葉。


でも今の私には、


少し重かった。


会社に着く。


エレベーターに乗る。


フロアに出る。


すると佐伯がこちらへ歩いてきた。


「おはようございます」


私は頷く。


佐伯は少し迷ったあと、


こう言った。


「昨日の資料の件なんですが」


私は足を止める。


佐伯は続けた。


「急ぎません」


そして、


私の顔を見ながら言った。


「でも、ちゃんと帰ってくださいね」


私は思わず佐伯を見る。


その言葉が、


なぜか胸に残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ