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夫に「ただの主婦」と言われた私、実は誰かの人生を変えていた  作者: すみれ


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第47話 思い出せなかったこと

その夜、


なかなか眠れなかった。


隣では夫がもう寝ている。


私は静かにベッドを抜け出した。


リビングへ行く。


テーブルの上には、


母が置いていった手帳があった。


見るつもりはなかった。


でも気になってしまう。


私はそっと開いた。


何年も前の予定が並んでいる。


会議。


出張。


打ち合わせ。


締切。


ページをめくっても、


また同じだった。


その頃の私は、


毎日仕事のことしか考えていなかった。


改めて見ると、


少し怖くなる。


ふと、


一枚のレシートが挟まっているのに気づいた。


私は取り出した。


近所のスーパーだった。


日付を見る。


倒れる二日前。


思わず苦笑する。


こんなものまで残していたんだ。


何気なく裏返した時だった。


私は手を止める。


裏にメモが書いてあった。


自分の字だった。


『牛乳』


『卵』


『誕生日のケーキ予約』


私はしばらく動けなかった。


誕生日。


誰のだろう。


数秒考えて、


思い出す。


夫だった。


その瞬間、


胸がざわつく。


私は手帳をめくる。


その週を探す。


そして見つけた。


夫の誕生日の日。


予定欄には、


朝から夜まで仕事の予定が並んでいた。


会議。


打ち合わせ。


会食。


空いている時間は一つもない。


私は目を閉じる。


そうだ。


思い出した。


ケーキを予約しようとして、


結局行けなかった。


プレゼントも買えなかった。


当日は帰宅が午前零時を過ぎていた。


夫は何も言わなかった。


ただ、


冷蔵庫にコンビニのケーキが入っていた。


その時のことを、


私はずっと忘れていた。


「何してるの?」


突然声がした。


私は驚いて振り返る。


夫だった。


眠そうな顔で立っている。


私は慌てて手帳を閉じた。


でも夫は見てしまったらしい。


少し笑う。


「懐かしいな」


私は言葉が出なかった。


夫はテーブルの向かいに座る。


そして何でもないように言った。


「そういえば」


私は顔を上げる。


夫は少し考えてから続けた。


「今年の誕生日、一緒に飯食えるかな」


私は返事ができなかった。


その一言が、


思ったより胸に刺さったからだ。

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