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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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昆虫採集とテレビゲーム

 その日の朝は寒さで目が覚めました。その時はまずエアコンをつけ、PCを起動しました。あの時は爆熱のグラボを積んでいたので、廃熱で温まるんじゃないかなんていう淡い期待を抱いて起動すると、メーラーがメールを配信してきました。


 それを読むと、もし英語のメールだったら南半球から送ってきたのかと思うほどに季節外れの内容でした。


 内容はこんなものです


 最近、嫌な夢を見るんです。今は都会に住んでいて、虫なんて害虫ばかりが出てくるんですが、以前は田舎に住んでいました。


 その頃なんですが、ソレはもう荒っぽいことをしていたんです。田舎となると虫の数は数えられるようなものではありません。当時私は少しお金を持っている友人の家で見せられた、昆虫標本を見て綺麗だなと思ったんです。


 そこで虫なんて山に入ればたくさんいるんだから捕まえてこようとしたんです。


 木の表面にシロップを塗ったり、光におびき寄せられた虫が出られなくなるトラップを作って仕掛けたりしました。


 その晩のことです、昆虫採集に行ってくると家族に言って出かけました。当時は治安もよかったので、怪我だけは気をつけろよと言って懐中電灯をもった私を見送ってくれたわけです。


 その時の昆虫採集は結構な成果が出ました。罠やライトによってくるむ士を片っ端から捕まえていきました。そしてシロップを塗っていた木には立派なカブトムシが止まっていたので、極上の戦利品だと捕まえたんです。


 それを大きめの虫かごに放り込んで、意気揚々と家に帰りました。


 そこで問題がありました、昆虫採集は出来たんですが、それを標本にする方法が分からなかったんです。そこで虫を大きめの箱に放り込んで、明日標本にしようと思いそのまま寝ました。


 その翌日、夏休みだし買ってやろうと言われ、祖父母揃ってゲームソフトを買ってくれたんです。当時はゲームなんて滅多に買ってもらえなかったのでテンションが上がってその日からしばらく買ってもらったゲームをやっていたんです。


 そうして夏休みが終わる頃、あの虫を詰め込んだ箱のことを思い出しました。昆虫が当然生きているはずがないと思いながらも、放っておけず倉に行き、もう埃のうっすら被っていた箱を開けました。


 するとそこから大きなカブトムシが一匹、飛び出してきて、私の腕に泊まったかと思うと噛みついてきたんです。もちろんカブトムシは噛みつくようなものではないのは知っているんですが、噛みつかれて思わずしゃがんだ私の上をカブトムシは開いている門に向けて飛んでいき消えてしまいました。


 残るはからだがボロボロになった昆虫だったものが大量に入っているだけです。


 それが蠱毒のようなものだと随分後になって知りました。


 さて、現在なのだが、あの謎のカブトムシに噛みつかれた傷跡はまだ残っている。目立つので夏だというのに長袖が欠かせない。始めはそれだけだったが、最近になって夢を見るようになった。


 夢の中で自分は箱の中に入れられ、自分だけの空間で腕が痛いと思ったら黒くなっている。それを見ていると、ボトリと嫌な音を立てて自分の腕が落ちる夢だ。


 目が覚めると真っ先に腕を見るが確かに腕は変わらずそこにある。ただ、その時に気が付くのは、夢の中で落ちる腕は必ずあの時、歯のないはずのカブトムシに噛みつかれた方の腕だと思い出す。


 こんな夢を見るんですが対処法ってなにか無いですかね。


 正直私も昆虫のことにどうしろとも言えない。ただ、反省の気持ちはありそうなので『写経でもなさったらどうでしょう』と返信した。彼からは写経を始めたらあの夢を見なくなったと喜びのメールが届いたのだが、更にしばらくしてから、社協を辞めたらまたあの夢を見るようになった、何時まで写経をすればいいんだと書かれていた。


 私はそれ以上は答えようがないので、写経をすれば夢を見ないのだから良いんじゃ無いでしょうかと返しておいた。そのメールが彼の気に障ったのか、その人からのメールはそれきりだった。


 蠱毒のようなことをしたのは感心しないが、そういった人でも元気でいてほしいものだとは思っている。

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