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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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墓地の中の禁足地

 そのメールは、くたびれた日に届いた。一刻も早く寝たかったのだが、何故かそのメールを読むべきだという使命感に駆られてPCの前に座った。


 内容はよくある禁足地の話だった。


 私の住んでいるところには禁足地がある。禁足地と言っても、誰もが入ってはならないわけではない。年頃の女性のみが入ってはならないという場所になっている。


 どうしてそんな決まりになっているのかは分からなかった。ただそういう場所だと言われていた。そこは墓地の一角で、あまり墓参りをして居る人を見ない場所にあった。


 ただ、墓地なんてお盆と彼岸くらいしかいかないので気にすることは無い。そんな理解で、自分があそこに関わることはないと思っていた。


 それでも、その年の彼岸は係になったらしく、母親が墓地の中、あの禁足地を含めて掃除することになっていた。嫌そうな顔をしていたものの、それは面倒くさいという顔で、恐怖のようなモノは見て取れなかった。


 墓地の清掃の日に、母親は出て行き、掃除をしたら帰ってくると言っていた。ただ、まだ熱い時期だったのに、冷蔵庫を開けると準備していたスポドリのパックが入れっぱなしになっていた。


 仕方ないので届けてあげようと、忘れ物をした母親のフォローに回ったのだが、それを持って墓地に行ったのがよくなかった。


 墓地に入ったときは何もなかった。だが、母親が掃除している区画に近づくと、赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。彼岸だからぐずる子供を連れてきた家族も居るのだろうと思いながら、奥の方まで行くと、母親が血相を変えて近寄ってきた。


「アンタ! 何してんの!」


「はぁ? 母さんが忘れたスポドリを持ってきただけでしょ」


 行きなりのイライラしている言葉に思わずきつめに言ってしまった。


「そう、ありがと、じゃあそれは貰っておくからあんたはすぐに帰りなさい」


「手伝ってあげようか? 母さんも歳なんだから」


「いい! 要らない! これは私だけでやらないといけないの! アンタは知らなくていいから帰りなさい!」


 キツく言われたので腹も立ってしまい手伝う気も失せ、親を放置して帰ってしまった。


 それから帰ってくると、少し寒気がしたので汗でもかいたのかと思いシャワーを浴びて寝ることにした。寝ているとなんだか奇妙な夢を見た。泣いている赤ちゃんが居るのだが、形がはっきり見えない。


 景色ははっきり見えるのに、肌色の塊のようなものがぼかしをかけたように見えている奇妙な夢だった。どうやら赤ちゃんらしいがハッキリしたことは言えない。


 そうして夕食頃に目が覚めた。家族揃って食事をするのはあまり多くなかったが、その日は彼岸なので揃って食べると言うことになっていた。


 食べている途中、母親が何もなかったね? と何回か聞いてきたので、これといって思い当たることもないし、『何もなかったよ』としか答えられなかった。


 だからそれだけの話ではある。ただ、ずっと後、母親が墓地の掃除をしていたところが水子供養の場所であり、あそこには若い女性が近寄ってはならないと言うのは実家を離れるときに聞かされたのだった。


 メールの内容は以上となる。幸い最後にこの方には息子さんが無事生まれたそうで、絶対にあそこに近寄らせるつもりは無いのだそうだ、男児にも影響があるのかは知らないが、ようやくあの時血相を変えてこちらに来た母親の気持ちが分かったのだといっていた。

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