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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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メールの後に寒気を感じた話

 あの日は目が覚めると暑かったのでいつもある扇風機を回して寝ようとしたのだが、なかなか寝付けない。いっそディスプレイの光でも浴びようとPCを起動させてメールをチェックしたときに届いていたモノだ。


 俺は最近妙な目によく遭っている。大事件があったわけでは無いが、細かい偶然が重なっている。


 別に通勤中に道路脇の側溝に転落した車を見るのも時にはあることだ。救急車が来ていないので気にしていなかった。


 ある時は道を歩いていると上の方から植木鉢が落ちてきた。見ればヒッしに謝っているご婦人がいた。窓際に置いている鉢を間違えて落としたのだろう、自分に当たったわけでも無いし、道路に散らばったのは植木鉢の破片と泥のみで、まだ種なり苗なりを植える前だったのだろう。


 植木鉢一個でトラブルになるのも嫌だったので足早に立ち去った。


 時には取引先に行ったときに、ビルの中に蜂が入ってきて刺されそうになったこともある。コンクリートのビルで、観葉植物もない、ドアは自動ドアだというのにどうしてあんなものが入ってきたのか分からないが、取引先だったので不要なトラブルを避けるために何も言わなかった。


 そういう細かいトラブルに何度も出会ったのでそういうものだと思っていた。偶然だと思っていたのだが、ある時、道を歩いていると駅前でお年寄りが何かトラブルになっているようだった。なんだか気になってそこに行ってみると、どうやら老人が電車賃を持っていなかったらしい。


 駅の売店でダラダラしながら話を聞いていると、どうやら都会から来た老人らしく、電車賃がそんなに高いなどと思っていなかったと言っている。


 まあ、都市部にしかいなければ従量課金の電車を知らない人も居るだろうとは思った。ただ、なんの気まぐれだったのか、その老人に多少のお金を融通してこれで帰れるか聞いてみた。


 するとご老人は何度も頭を下げて切符を買っていたので、田舎じゃ馬頭楽ないなと思いながら見送ろうとしたところ、切符を買ってから一度戻ってきて『これを差し上げます』と言い、自分の手を握ってきた。


 その奇妙な握手が終わった後に、手を開いてみると何処のなんというものかは分からないが、御守のようなものが一つあった。


 これにはよかったことと困ったことがある。その御守をもらってから、災難な出来事に遭うことが無くなって、平和な日々を送れるようになった。それは確かによかったことだ。


 ただ、困ったことに、最近また災難な出来事にたまに遭遇し始めた。御守を見るともうくたびれきってヨレヨレの状態だったので新しくしたいのだが、あの老人にこれが何処のものかなどとは聞かなかったので新しくできない事に困っている。


 そういう内容で、画像が添付してあり、それを開くと有名な神社の御守だったのでどこそこのものですよと返しておいた。


 彼からそれ以後、返信はないのだが、きっと便りが無いのは良い便りなのだと思っている。


 ただ、あの日目が覚めて扇風機を付けたのが真冬であり、メールを読み終わったあたりで急に寒気が来て出しっぱなしの扇風機を切って布団を被って寝た。何故あの時扇風機を回すほど暑く感じたのか、その理由は分からないままだ。

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