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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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夏祭りと数の合わない墓参り

 あの日はネトゲをしていました。ゴーストを倒したり倒し損ねたりしながらレベリングをしていたときです、全滅したときに『やっぱゴーストはリスキーだよな』と一人が言ったところ、モンスターならまだ優しい方だろ、と言う人が居ました。


 全滅したのでホームに戻ることになったわけですが、全滅していると焦ることもないわけで、全滅したときに発言した人にアレってどういう意味? と聞いたんです。


 すると、本物だと剣で切ったり魔法を打ち込んだり出来ないからなと話を始めました。


 俺は小学生の頃に夏休みにお祭りに参加した。その時は友達とワイワイ遊んでいたのだが、お祭りともなると悪ガキも出てくる。悪いことにその時のお祭りは大きめの公園でされていたのだが、その公園は墓地が近くにあった。


 当然のように墓地を探検してみようとなる、先生方はお祭りは監視しているが、遅くなっても遊んでいる子を捕まえるためであって、墓地に入ろうとするやつなんていちいち監視をしていなかった。


 監視の目がないのをいいことに集団で公園の出口から帰って行く様に出て行った。時刻は夕方で、暗くなっても遊ぶ生徒を監視している皆様は公園からきちんと生徒達が帰っていくかを見るので精一杯だったようだ。


 そうなると皆で墓地に向かった。その途中のことだ、一人が駄菓子をいくつか取りだして皆に配った。言ってはなんだがケチな子だったので珍しいことをするなと思ったら、全員に行き渡ったのを見てからニヤリと笑った。


「じゃあ、ソレをここの無縁墓に一人ずつ供えてくることにしようぜ、一つずつ渡したんだからちゃんと次に行ったやつが人数分供えてあるか確認していこう。そのくらいも出来ないビビりはいないだろ?」


 正直気は進まないのだが、俺以外にもそう思っているらしく、一人が『なあ、死んだ人間にそんなことをするのはどうなんだ?』とは言ったのだが、当の本人は『だから無縁墓にするんだよ。バレたって知り合いがいないんだから怒るようなやつだっていないだろ?』となかなか死者に失礼なことを言っていた。


 そんなわけで皆して墓地に参ることとなった。罰当たりではあるが友人達のあいだで臆病者扱いされるのは学校での立ち位置に関わる。というわけで嫌々ながらも全員が墓地の前の駐車場から入っていった。


 その時はビビっていたので一人ずつ入っていく中、俺は墓地に入ると脇に寄って見えない場所に移動して隠れた。この際お備えが足りなかったとしても数え間違いで通す気だ。ソレでいけると思っていたのだが、自分はその場でこっそり内ポケットに供える予定の駄菓子を隠して、いい感じの時間になったらさも置くまで行って来た風に出てきて駄菓子は全部揃っていたよと報告した。


 バレたときには開き直ろうとしていたのだが、言い出したやつ以外全員がちゃんとお供えはあったと報告した。それからヤツは最後に『よし、全員日和らなかったな。じゃあ俺が最後に確認してこよう』と言って堂々と墓地に入っていった。


 その中で数人が引きつった顔をしていたのに気が付いたのだが、コイツらも何かビビっている様子なのは分かった。


 正直アイツが帰ってきて、逃げたヤツ捜しをされるのは嫌だなあと思いながら待っていると、ニヤニヤと笑みを浮かべたヤツは帰ってきた。それから楽しそうな顔をして言う。


「おう、お前らもちゃんと全員置いてきたんだな、一人くらいビビってんじゃないかと思ったが、案外度胸あるじゃねえか」


 その言葉に自分は供えてきていないのになんで? と頭の中に謎が溢れたのだが、本人はきちんと供えてきたのに満足しているのか、見ていてあまり気分のよくない笑みを浮かべて皆を見渡し解散となった。


 その翌日、投稿すると、昨日祭りであの悪趣味な肝試しをやったメンバーが何人か来ていない。なんでも急な夏風邪を引いて熱が出たのだそうだ。


 そんな時、あの肝試しに参加しても何も起きなかったグループの一人が、あの時にメンバーを集めて話を始めた。


「なあ……実は俺、あの時お供えしてこなかったんだよな……もしかしてお前らもか?」


 その言葉に全員頷いた。結構な人数がお供えなどしていなかった。


「でもさ、あの時は全員数があったって言ってたよな? 俺らが嘘をついたのはともかく、アイツらも数が揃ってたって嘘吐いたのかな?」


 どうにもあの自信からして嘘をついているように思えなかった。彼らは数日間休んでから登校してきたが、全員あの時のことを話題にはしなかった。


「こんな事があったんだよなあ、まあネトゲの中だから言えるんだけどさ、幽霊を見たわけじゃないんだが見た方がオチがついて良かったかもなって思うよ」


 そんなことを言って彼は話を終えた。おそらくあの時に無縁墓まで本当に行った奴らが風邪をひいたのだろうと数をごまかした連中は思っているが、あのことを話題に出すのはなんだか躊躇われ、それきり話題に上がることはなくなったのだそうだ。

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