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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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時代錯誤な村の中で……

 眠気に耐えられず、休日の半分くらいを寝ていたときのこと。ようやく目が覚めたのでPCを起動してメールチェックをするとその時の少し前くらいに送信されたメールが届いていた。


 その内容は一応現代日本のことではあるらしい。


 私は田舎に住んでいたのだけれど、どうにも古い風習が抜けきらない場所だった。女に額は要らない、そんなことを両親に言われながら中学まで育ち、何とか高校への進学は認めてもらえる成績で進学をした。その時にも中学を出たらさっさと嫁ぎ先を探せと言われていたので随分と嫌な顔をされた。


 そんな所に住んでいると、ここは現代日本なのだろうかと疑問に思ってしまうのだが、数少ない同級生には中学を卒業すると男が話を持ち込んできて、そちらで結婚出来る年齢まで同居するという子も居た。


 だが、怖いというわけではない、それらは確かに時代錯誤だとは思ったが、ここはそんな場所なのだと諦め半分だった。ただ、高校に入ったときスマホを買ってもらって変ったことがある。


 なにしろ高齢者が多いのでスマホと言ってもどんなことが出来るのか分からない人が多い。そのおかげで進学祝いにと舌先三寸でねだって買ってもらった。それでカメラと通信の自由を手に入れ、この小さな集落の外を手に持った小さな板から見ていた。


 高校が一年を終えようという頃、なんとなくここらの写真を撮ってSNSにアップロードして見ようと思った。だが、思っただけでそれはしなかった、いや、出来なかったと言うべきか。


 SNSに流れてくる写真を見ながら、所謂映えるスポットを探してスマホをもって高台に上がった。ここからならいい感じに昔ながらのまるで時代劇のような光景が撮影出来る。


 そう思ってカメラを起動し、スマホで集落を撮影した。それからどんな風に撮れたのか確認をしたところ、ゾクリと背筋が泡立った。


 そこに写っていたのは多くの顔だった。炎上……と言ってもネットで起きることの比喩ではなく、青白い炎に包まれた人の顔が無数にカメラに映る範囲に飛んでいた。


 始めは理不尽な目に合った女の人たちのものかとも思ったのだが、写真を見ればよく見ると男の人の霊も確かに居る。それらがフワフワと村の上の方を浮遊していた。


 怖くなって大急ぎで家に帰って布団を被って震えることになったのだが、その晩、祖父母と両親が集まっているところに呼び出された。


 そこでされた話は唐突なもので、大学に進学しろというものだった。そして進学したら集落を出て二度と帰ってくるなと言われた。学費は出すと言われ、アレだけ女に学は要らないと言っていた祖父母も嫌そうな顔をしてさっさと勉強をしろと言い始めた。


 そうしてキツネにつままれたような感覚のまま、それから勉強を続け都市部の大学に進学した。それ以来両親と電話でやりとりをするくらいで、これといって特別なことはない。ただ、進学するときにこの集落の詳細は語るなと言われた。


 随分と多くのことがあって、伏せていることも多いけれど、私は厄介払いというか口封じのようなことのためにあそこを追い出されたのだと思っている。両親がたまに掛けてくる電話以外であの集落との縁はすっかり切れてしまった。


 あの時カメラに映ったものが何なのかはさっぱり分からないが、進学してから因習村という言葉を知ったときには嫌な思いをした。あそこは今でも閉鎖的なまま、女どころか男も理不尽に苦労しているのかと思うと気の毒に思うことがある。


 おおよそ上記のメールだったが、そのメールのアドレスをチェックすると、匿名性の高いサービスを使って送られていたため、おそらく出来る限り自身のことを知られないまま情報を送ってきたのだろう、彼女の意思を尊重してそれ以上の情報は聞かないことにして話を書き留めた。

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