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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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オカルトと科学と思い込み

 その日は用事があってスマホを見ることが出来なかった。さすがに、人と対面しているときに通知が来たのでスマホを見るというわけにもいかない。だからそのメッセージに気が付いたのはもう夜になってからだった。


 内容としては怪談になるのだが、正直夜にそれを読むなら明日の日の出まで寝てから見れば良かったなと思った、おおよその内容を要約しておこう。


 田舎に住んでいるわけだが……どうにもいなかの木造住宅というのは家鳴りがする。新しい家というわけでも無いのに時々木の擦れるような音がするので、どうにも気が散って仕方ない。


 寝る前にそれがあるため、なかなか眠れず、仕方なしに心療内科を受診した。保険やその他いろいろの場面で不利になるのは知っていたが、このままでは不眠で体を壊しそうだったので、背に腹はかえられないと言うわけでクリニックの予約を取った。


 そうして受診した日のこと、眠れていないこと以外は問題無いとお墨付きをもらったのだが、その眠れないというのが致命的なのでいくらか薬を処方してもらった。


 それを飲むと寝ることは出来た。寝ることはできたのだが解決とはならなかった。


 家鳴りの原因も考えず寝ることだけを始めたら、今度は悪夢を見るようになった。夢の中でその家に住んでいると、玄関チャイムが鳴って、玄関を開けると屈強な男に捕まり車に乗せられるというものだった。


 何故か内容は変らない。眠れないよりは幾らかマシだが、そんな夢ばかり見るので気分が悪い。それにいつも捕まる段階で目が覚めてしまう。


 そこでいよいよ不動産屋に問い合わせることにした。その家は過去に何かあったのでは無いかと問い詰めると、『告知義務は無いので……』と前置きしてから話を始めた。


 なんでも、前の住人はそこ長年住んでいた老人だったのだが、寄る年波には勝てず、息子夫婦に認知症を専門にしている病院が運営している施設に入ることとなったのだが、その時には申す出認知症がかなり進んでおり、施設に連れて行くのに随分と苦労したそうだ。


 そのためあんな夢を見たのかと思ったのだが、それにしても連れて行く方法が荒っぽすぎるのではないかと思った。


 ちょうど薬も切れてきたのでクリニックにかかるときに余談として少々の世間話のつもりで話してみた。すると医師から返ってきた言葉は……


「医師としてそういった超常現象を認めるわけにはいかないんですが、認知症の患者さんは施設に連れて行かれるのにそのくらいの被害に遭ったと訴える方は珍しくないんですよ。例えやさしくなだめすかして連れて行ってもすぐに思い出が都合に合わせて変化するんです。医師としてはそれはよくあることと言えますが、その連れて行かれたという悪い記憶を貴方が追体験していると考えることも出来ますね、その方とは無関係なんですよね?」


 私は売られていた物件に越してきた身なので、そこが瑕疵物件では無いことしか知らない。そのおかげで前に住んでいた人の事情は知らないと答えた。


 医師も首をかしげるような話ではあったが、ストレスからでしょうと薬を強めのものに変更された。


 それが幸いしたのか、目が覚めてすぐはいつもの夢を覚えていても、すぐに夢の内容を忘れるようになった。


 私はいつまで家に残る意識みたいなものと同居しなければならないんでしょうか? 何か良い違法方はありませんか?


 そう、最後に書かれていたので私は、近くの神社から御守でももらってくることをオススメしておいた。幸いそれが功を奏したらしく、返信があり、その夢を見なくなったのだそうだ。


 付記しておくなら私は彼の住んでいるところの神社に詳しくはない。ただ、大抵の場所に神社があるのでそう勧めただけだ。結局、こんな事を言っては身も蓋もないが、夢を見るのは薬で押さえつけることが出来るのかもしれないが、内容の方は本人の頭の中から出てきたものだ。ならば本人が効き目があると思っているものを与えればいい。


 今回のことが怪談なのかどうかは微妙なところだが、彼は間違いなくそこに住み始めたときには前居住者のことを知らなかったというので一応はオカルトの話としておく。

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