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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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幽霊には幽霊をぶつけるんだよ

 私がそのメールに気が付いたのは消える寸前だった。送信者が慣れていなかったのか、メールの本文にやや違和感があった。PCを使い始めた子供のような誤字脱字があるのでスパム判定されたのだろう。


 偶々スパムフォルダを一掃しようと開いたときにそのメールは目に付いた。


 なんでも、人形が怖かったのだそうだ。


 俺も自慢じゃないんですがね、幽霊とかそういうの信じてなかった。ただ、俺が高校を卒業したということで、両親そろって引っ越そうかと言い出した。


 今のところからでも大学には通えるが、移住を考えている場所でも利便性はそこまで変らない。住宅ローンが嫌だからと長年貯蓄をしてきて僅かばかりのローンで買えるからと引っ越す気のようだった。


 別に大学に入ったら出て行けと言われるわけでもなかったし、賃貸から一軒家を、ようやく両親がもとうとしていたことに安心した。賃貸から出ていくことになって、自分の住んでいるところに転がり込んでこられても困るので、定住出来そうなところを見つけたのはいいことだ。


 ただ、その家は、建売住宅で内見にも参加させてもらえなかった。大学生なんだから嫌なら出て行けとまで言われたので、仕方なく何も口出しをしなかった。


 その結果、あっさり新居を決め、引っ越しの日取りも決まり、今まで住んでいた賃貸とは何の感慨も無くわかれることになった。


 そうして大学入学後少しして新居について行ったわけだが、その家で部屋を与えられたのでひとまずその部屋で寝ていると、なんだかやけに寝苦しい。まるで腹の上に何か重しが乗っているような感じがした。


 寝返りも打てないので目を開けてみると、自分の腹の上に子供服を着た何かが居るのが分かった。身長にせよ、体に感じている重さにしても子供のものとしか思えない。だが、豆球でうっすら見える顔は老婆のものだった。


 それが腹の上で腕を首に伸ばして絞めようとしてくる。だが子供か老婆かは分からないが、年のせいで力が無いようで、締めにかかっているようだが不快感を覚えるものの、呼吸は出来る程度の力しかなかった。


 正直、両親に言ってこの家には何かあるんじゃ無いかと思ったのだが、大枚はたいて買った住宅に文句を付けていい顔をされるはずが無い。


 仕方なくその場は諦めた。


 それから数回そんなことがあったのだが、ようやく引っ越しの荷物も片付こうかという頃。


『これはお前のもんだから部屋に置いとけ、大事にしろよ』


 そう言ってガラスケースを渡された。中には所謂五月人形が入っている。祖父母が自分が生まれて酷く喜び、節目に買ってくれたものらしい。


 そんな重要なものをあの殺風景な部屋に置いていいのかとは思ったが、他に飾る場所が無いらしいので自室に置いておいた。


 その晩のことだ。夜中に目を覚ますと腹の上に幽霊か何かが乗っている。その手が首を絞めようと伸ばしてきたとき……


 ぶわっと風が吹いてその幽霊の姿はなにかに貫かれたような一点に吸いこまれるように消えていった。


 そこで意識が途切れたのだが、その朝のことだ。気分よく目が覚めたので部屋のカーテンをしゃっと開けた。日光が室内に降り注いでくる。振り向いたときに、日光を反射してまぶしいなと思ったら、五月人形のケースが光を反射していた。


 直射日光は良くないかと思い日陰に移そうとしたときだ。近寄ったときに違和感があった。考えてみればその人形はベッドの方を向いておいていたわけでは無い。


 なんとなく穏やかな顔をしているその人形を見て、ああ、この人形が助けてくれたのかなと思った。


 あの幽霊がなんだったかは分からないが、とにかく一応の解決はしてくれた。アレがなんだったのかは不明のままだが、それ以来アレは現れていないので感謝をしつつその人形は大学を卒業した今も、部屋に御守代わりに置いている。


 誰も信じてくれないので私に送ったそうだが、人形に魂が宿るという話は珍しいものではない。きっと人が思いを込めて送った人形が何か良くないものを退治してくれたのだろう。大事にしておくといいですよ、と私は返信しておいた。


 返答たった一文『信じてもらってありがとうございます』とだけ書かれたメールが届いた。彼が人形に助けてもらえるほどに送った祖父母に愛されていたのだろう。


 その話は後味のいい話だったので、メールボックスのフラグ機能で『重要』フラグを立てて保存しておいた。彼の今後が良いものであることを願っている。

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