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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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向こうの見えないトンネル

 そのメッセージには最後に『証拠が残らないように消しますね』と、一通り読んだ後、少しの時間を置いてメッセンジャーから話を消していた。


 思うように編集して、特定されないように記録してくれと初めに送ってきたのは有言実行だったようだ。そのため出来るだけぼかして残す。


 とある場所、そこは幽霊が出ると噂のトンネルだった。某有名な心霊スポットとは違う、小さな地元民くらいしか使わないようなトンネルだった。


 短いものだから、トンネルの入り口から晴れていれば向こうに光が見えるのに、そんな所に幽霊が出るのだろうか? 眉唾物では? と思っていたのだが、そのトンネルを通ってみようと免許を取ったばかりのヤツが言い出した。


 ソイツも免許を取っていい気になっていたのだろう。地元では所謂『実家が太い』方だったので、高校を卒業すると教習所に行き、免許を取ったら車を買ってもらっていた。いいご身分だなと思いながらも、そのトンネルには興味があったので彼の車の定員五人揃って夜にそのトンネルを走ることを決めた。


 夜、ソイツの家に皆で集まり、車を見せられたのだが、ガレージに止まっているセダンを見る限り、結構な値段がしたんだろうなと素人目にも見えた。


 さっさとそれに乗ると、全員乗ったのを確認してからガレージをリモコンで開けていた。それから走っていき、トンネルまで行ったのだが、そのトンネル前にパトカーが止まっていた。赤色灯を光らせているので、その前で止まると、運転席のウインドウを開ける。すると警察官の人が話しかけてきた。


「すいませんねえ、この先で事故があったので迂回をお願いします、国道の方に行けば少し走るとトンネルの向こうに出られるのでそちらに行ってください」


 そう言われ、事故が起きたなんて実際に幽霊の仕業なんじゃないかと思っていたが、皆でそんなものだと言い出しながら、向こう側も見てみようぜと誰かが言って国道を走り、それから曲がってトンネルの向こう側に繋がる道に出た。


 しかし、トンネルの向こうにはパトカーなどまったく止まっていない。そこで一人が声を上げた。


「なあ、よく考えると事故ったって言ってもトンネルの中に何も見えなかったよな? このトンネルって短いのに事故車が見えない事なんてあるのか?」


 その疑問と、トンネルの中に何も残っていないのを見て全員が固まった。そこから帰るにはトンネルを通った方が圧倒的に早いのだが、揃ってUターンして同じ道を帰ろうと決め、そこから逃げ出すように車を走らせ帰っていった。


 そのトンネルで事件や事故が起きたという記録は見当たらないのだが、何しろ古いトンネルなので作るときには何買ったのかもしれないが、全ては闇の中となっている。


 おおよその内容はこのようなものだった。警察の幽霊か何かがどうして出てきたのかには『危ないから入るなって教えてくれた』と言う派閥と『何か悪意があってあそこを通られるとマズいから止めたんじゃないか』という派閥に分かれたらしい。どちらが正解かは分からないものの、トンネルを通らないのは正解だったのではないかと思う。

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