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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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滑って落ちる

 その日は夕方まですることがあって色々駆け回っていた。忙しいななんて思いながら作業をしていた。そうして疲れていたのだが、帰宅後、スマホを確認するとメッセンジャーに通知がたくさん来ていた。


 気が重い一日だったのだが、そんな日なので出来ればほのぼのした話題だといいなあと思いつつメッセージに返事をした。


 その内容はいくらか気落ちするほどの内容だった。


 中学生だった頃、いじめがあった。助けられるかと言えばそんなわけは無い。こっちだって自分の受験だけで精一杯なのに、クラスメイトというだけのヤツに火中の栗を拾ってやるほどやさしくはなれない。


 冷たいとは思いつつも、アイツがいじめられていればこちらがターゲットにされることは無いと嫌な話だが安心していた。複数人数をいじめるほどいじめている連中に余裕があるわけでもない、悪いなとは思いつつ、ソイツにいじめを押しつけて自分は受験勉強をしていた。


 一々体を張ろうと思わなかったのも、始めはスマホのグループから外される程度の事から始まったからだ。いじめられているやつには悪いが、言い方はあろうともたかがスマホのグループだ。受験に必須の内容が書き込まれるわけではない。精々が雑談に入る話題が分からない程度だ、疎外感を味わう程度で済むなら気にしなくていい、そう自分に言い聞かせて罪悪感を希釈していた。


 ある時だった、いじめられていたヤツは授業中にいじめっ子に対して突然椅子を振り上げた。まあそれなりの事件なわけで、気の毒なことに停学になった。ただ、椅子を振り上げた事は咎められても、学校にもメンツがあるのだろう、その原因がいじめだとは絶対に認めなかった。ただ、クラスのほとんどがよくあるいじめの終わり方だとヒソヒソと話していた。


 ただ、停学になった事件の後、いじめっ子の様子がおかしくなった。授業中に周囲を見回していたり、廊下を歩いているときに頻繁に振り返ったりしていた。


 不思議なのは、いじめっ子達が授業中に周囲を見ているとき、そのグループ全員が同じ場所を見つめていた。不安からあちこち見回すというより、その場に何かが居るかのように一カ所を全員で見ていた。


 時折振り返った時も、後ろを歩いていたいじめっ子が前を見て逃げるようにトイレに入ったかと思うと、前を歩いていた方のいじめっ子が振り返るような状態だった。


 そんな心身が不安定な状態で授業は受けられないだろうと、学校から休養を勧められた。学校の残り日数を出席しなくても入れる高校へは推薦するからとあからさまなもみ消しに、親たちも従った。おそらく後ろめたいことを自分の息子娘達がしていたことを薄々感付いていたのだろう。


 そうして学校には平穏が戻った。見せかけだけの平穏なのかもしれない、ただ、受験までその平穏が続けばいいと皆が思いながら受験勉強をしていた。


 ただ、不思議な事はあった。どう考えても滑り止めの高校に落ちる生徒が幾人か出たのだ。それらは全員あのいじめっ子達を教師陣が押しつけようとしていた高校だった。そうして結果的にいじめっ子達は全員が同じ中学から進学したものが仲間以外居ない高校に進学した。


 そこはなかなかに荒れていたらしく、仲間の少ないいじめっ子達はそこに耐えられず、休学や自主退学となってしまった。


 こんな後味の悪い話が書かれていたのだが、これの送り主は自分にも累がおよばないか心配なので何か魔除けのようなものはないかと書いてあった。自分が見て見ぬ振りをしておいて魔除けとは都合が良いなと思いつつ、送信者のすんでいる県で有名な神社を紹介しておいた。神社の実力派折り紙付なのだが、果たして後ろめたいところのあるこの方を助けたのかは続報が無いままとなった。

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