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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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夏の日、暑い施設にて

 その日は朝食を食べてから喫茶店でのんびりしていた。そんな時にスマホにメールが来る。貴重な情報源なのでソレを開いてみると匿名でお願いしますと内容が書いてあった。


 俺が住んでいた村では小学校で必ずやるイベントがあった。内容は宿泊研修なのだが、どうにもその行き先がボロいので評判が悪かった。


 夏にやるので暑いだの蚊が出るだの、寝苦しいだのとよくまあここまで評判の悪い建物で行う子に決められたなと思った。


 とはいえ、小学校で一回きりの一泊のイベントだ。いくら評判が悪かろうが、友達と一晩過ごすというイベントはそれなりに楽しみだった。夏だから暑いのは我慢するしかないと思ってはいたが……


 そうして研修となったのだが、その当日、施設に行くと思った以上にボロくなっている建物だった。皆それでゲンナリしたものの、一晩泊まるだけのものだと割り切って部屋に行った。


 数人が一部屋に詰め込まれたのだが、冷房は扇風機だけだ。今ほど暑くはなかったが、それでも、よくこんな前時代的なところを選べたものだと感心したくらいだった。


 クラスメイト達と口々に愚痴を言いながらそこでの研修をしていった。なかなかに楽しいものだったのだが、それは屋外だったからではないかと思う。


 ひとしきり研修を終えると汗を流してその後は自由時間だ。トイレ以外で自室から出るなとは言われていたのだが、それでも部屋に一人はトランプや小さなボードゲームを持ってきているヤツがいた。


 それで皆コソコソと夜に遊んでいたのだが、その時になんだか冷たい風が吹き込んできた。


「なあ……なんか寒くね?」


 誰かがそんなことを言い、皆それに同意した。とにかくやたらと寒いのだ。季節は真夏だというのに、秋を過ぎて冬になろうかという頃に吹くような寒い風が吹いてきた。


 しかし部屋の中だというのに何故寒い風が吹いてくるのか。


「……なあ、隙間風がどっかから入って来てんのか?」


 その言葉に誰も返事を返さない。誰もがこのボロい建物のまわりが窓を開けても熱い空気に包まれているのを知っていた。


「そういやさあ……昔この建物で熱中症で倒れたヤツが出たって話を聞いたことあるんだよな……なんかその頃は水も制限されててさ、暑い暑いと言っても教師連中は話を聞かずに結局夜に救急にかかったって話だぜ」


「やめろよ、そんな昔の話持ち出すなって。大体、ここで死人が出たなんて話は聞いてないぞ」


「だからさ、運ばれたヤツも熱中症で回復したんだけどさ、その時の恨みがこの建物に残ってるって話なんだよ。ほら、生きてる人間の方が怖いってよく言うだろ?」


「そんな馬鹿馬鹿しいことがあるのかよ」


 そりゃ生きてる人間の方が怖いなんてのはよく聞くけどさ、小学校で一晩過ごした施設にそこまで恨みを持てる人間がいるのかよ。


 そう考えたのだが、真偽不明の噂を一々気にしていられないのでさっさと寝るぞと言って皆で寝た。


 翌朝、数人が救護室に運ばれた。暑い中布団をしっかり被ったまま水分もろくに撮らず寝たのが原因だった。幸い病院に運ばれもせず、涼しいところでしばし水分を取りながら休んで回復をした。


 おかげでその時の噂は真相を確かめられなかったのだが、同室だった皆はあの噂が真っ赤な嘘ではないのではないかと言うのがおおよその意見になった。


 今ではもうその施設は使われていないそうだが、彼からすればあまり気分のいい出来事ではなかったそうだ。


 もう今となっては随分昔の、彼の苦々しい思い出なのだという。

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