表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪談集「暗中」  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/77

小学生を怖がる夫

 その日届いたメールは、返信不要だと始めに書いてあった。奇妙な体験を書き残して欲しいとのことだった。


 どうやら結婚をしてからどうにも奇妙な事が続いているのだそうだ。


 私が夫と結婚をしたのはもう十年ほど前、子供はおらず、二人で将来を生きていこうと言って結婚を申し込まれた。まあその時点ではそこまで奇妙な事では無かった。


 ただ、夫は子供が嫌いらしいが、ソレは常軌を逸していた。家の前を小学生が通るときでさえ家中のカーテンを閉めて戸締まりをしてやり過ごしていた。


「別に普通の子達じゃない?」


 とは言うのだが、夫にはそう思えないらしく、必死に隠れていた。子供の何が怖いのだろうと、一度外で通学路を通る小学生達を見ていたことがあるが、ごく普通の子供達だった。


 あの人が怖がるだろうし、子供達が全員通り過ぎてから家の中に入ったところ『子供達はもう居ないんだろうな?』と聞いてくる。この恐れ方はおかしいと思ったのだが、それを深く聞いていいとは思えない雰囲気をしていた。


 それからしばし、そんな生活を続けていたのだが、ある時夫が出張で一週間ほど家を開けることになった。見送ってから、初日は子供達が通るからといって気にしなくてもいいだろうと、カーテンも開けっぱなしにして過ごした。


 何の問題も無く小学生たちは家の前を通っていき、何が起きるでもない、この家を気にかけるでもなくスルーされたので夫が何を怖がっているのか分からなかった。


 翌日、気が紛れるかと思い掃除をしていたのだが、その時タンスの奥にアルバムを見つけた。夫の昔の姿が載っているのかと、好奇心を抑えられずソレを開いてみた。デジタルデータをわざわざ光沢紙に印刷したのだろう、幼い頃からの写真が一枚ずつ貼られていた。


 ソレだけのものだったので大したものじゃないかと思ったのだが、時間を遡っていくと、夫の隣に夫そっくりの子供が写っている写真があった。


 同じ人のようにそっくりだったその子はページをめくっていくとどうやら小学生以降の写真はないようだ。これはいったい誰なのだろうと思ったのだが、写真を見せて誰だと問いかけられるほどではない。


 そっとアルバムはしまい込んで、触った証拠もないようにしてからタンスの奥に戻しておいた。


 ところで、夫は次郎という名前をしている。ただ、夫の実家に挨拶に行ったときには親族が揃っていたが、あのそっくりな人は居なかった。


 次郎という名前を長男に付けるだろうか? そう考えると小学生以降の姿がない夫のそっくりさんの正体がもしや双子の兄妹なのでは? もしや夫には一郎のような名前の兄が居たのではないかそう思うとどうにもしっくりくるような気がした。


 ただ、どうしても理解出来ないのが、仮に一郎としておくとして、どうして夫が小学生を恐れるのかということだ。その一郎が小学校以降の写真が残っていないことと無関係なのだろうか? 考え始めるとキリがなかった。


 夫にはその勝手な推測を話してはいないが、これは心の奥にしまい込んでおくことにした。きっと知っても誰も幸せにならない事なのだろうから、ただ、その誰かがいたことを覚えていてください。


 そう締めくくられたメールが届いていたのだった。もちろん似ている子が居ただけで、名前もなんとなく次郎と付けられたのかもしれない、ただ、私はそれがどうにも偶然とは思えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ