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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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引っ越し出来ない人

 その日、久しく開いていなかった、スマホの容量を少しだけ消費しているメッセンジャーに通知が届いているのに気が付いた。久しぶりに開いてみると、長文で怪異について書かれていた。答えは必要無いが、意見があれば返信求むと書かれている。


 私は瑕疵物件に住んでいる。何しろ家賃が安いし、一回人が住めば次の住人への告知義務も消えることから、あまり柄の良くない不動産業者からは安く歓迎されている。あまり高収入ではないがそれなりの物件を渡り歩く生活ができたのはこのためだ。


 ただ、この生活を続けていいのか悩むことになった。その物件では過去に自死があったらしいのだが、借りるときに詳細を教えてもらえなかった。義務があると言っても詳細までは……だし、詮索して業者と関係が悪くなってしまうのも避けたい。


 そのため、細かいことは詮索しない代わりに家賃を多少安くしてもらった。そうして謎の多い物件での生活は始まったのだが、まず部屋に入った時点でただ事ではない感じがした。何しろ生臭いのだ。普通は瑕疵物件となると特に念入りに清掃されるはずで、特殊清掃もきちんと入れているはずなのだが、何故か部屋には行ったときに真っ先に感じたのは生臭い感覚だった。


 本当に生臭かったのか、感覚が生臭いと錯覚したのかは分からないが、とにかく初めて部屋に入ったときからいやな感じがしたのは確かだ。


 その部屋で生活を始めたのだが、厄介なことが起きる。瑕疵物件を借りるくらいにはケチな性分なので、未だに親から仕送りをもらっている。ただ、その条件にスマホで顔を見せてお礼を言えと言われている。要するに顔くらいは見せて礼を言えと言いたいらしい。


 確かに一方的にもらっているのだからそのくらいはごもっともなのだが、始めに引っ越したときに報告をすると、実家の父母が「同棲しているなら仕送りは打ち切る」というのだ。なんでそんな話になるんだと文句を言うと、さっきから小さく女の笑い声がしている、コソコソ親にも言えない相手と同棲しているんだろうと言われた。もちろんそんなことはしていないので、スマホのカメラを室内に向けて全室を映して回ることになった。


 一応はソレで納得して貰ったものの、声が聞こえたのは確かだといわれたのが気になって仕方がない。この家には誰かがいるとでも言うのだろうか?


 とはいえ、瑕疵物件を進んで借りているのだからそんな細かいことに文句を言うのは筋違いなのは分かっている。ただ、そのまま住み続けたのだが、部屋が部屋だけに彼女も呼べない。いや、正確には一度呼んだのだが、部屋に入るなり気分が悪いから帰ると言われてしまった。


 後日病院に行ったとまで言われたので本当に具合が悪かったのだろう。ただ『あの部屋普通じゃないよ』と言われ、別れ話まで持ち出され、そこそこ長く付き合った彼女とは別れることとなった。


 おかしいのはあの部屋に住んでいると何かと良くないことが起きるのだが、なぜか引っ越そうとするとその気が萎えてしまう。『この部屋でいいや』という気分が引っ越し業者を調べているときにわいてきて、引っ越すのが面倒になってしまう。それなりに住んだというのに不動産屋も出て行けとは言わない。


 ならばこの家を終の棲家にしてもいいのでは無いかと最近思えてきた。ナニカがおかしい気がするのだがもうそれも気にならなくなってきている。いい加減相談するところに相談するべきなのだろうが、まともなところに相談しようとするとその気が失せる。


 なんとなくSNSで見つけたここに送ってみることにした。


 大体こんな事が書かれていた。誰でもその文からそこは危ない場所だと分かるのだが、私が気づくのが遅れたからだろうか? そのメッセージに返信しても送信者は退会しましたと表示され連絡が付くことはなかった。今も少し気がかりではある。

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