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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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小学校を卒業するときのしきたり

 その日は帰宅するなり早々に寝てしまった。今思えば不思議な力が働いているんじゃないかという眠気に襲われてしまった。そして目を覚ますのはスマホへのメール着信音でだった。


 メールを開くとどうやら昔住んでいたところでのことが今も後を引いているのでどうしたらいいかということだった。


 私の住んでいた町では奇妙な風習があった。いや、当時は奇妙なものではなかったのかもしれない。小学校を卒業すると、一日待ちのはずれの方にある空き家に一泊するというものだ。その空き家で何があったのかは知らないが、当時は新しい感じがしていたし、町を出るまでに何度もリフォームのようなことを繰り返しているようだった。


 そうして数少ない卒業生が集まってその家での一夜が始まった。小綺麗な家で、始めは優麗だなんだとOBなんかに言われていた妙な噂も入ってすぐにかき消えた。


 ただ、空き家なのに何故か水道や空調がしっかり使えるのはおかしいなと言う子もいた。


 そんな中でつまらないなあと過ごしていたのだが、当時はよくスマホも無いのにそんな退屈な時間を過ごせたなと思う。友人達とのおしゃべりだってすぐにネタ切れする有様だったが、一晩をそこで過ごさなければならない。


 皆で暇そうにしていたところ、誰かがトランプを持ってきていたのでそれで暇を潰すことにした。電気が通っているとは言っても、流石にゲーム機やテレビはなかったからだ。


 そうしてトランプを始めたのだが、どのゲームをやっても必ず同じ子供が負ける。調子の悪い日もあるだろうとは確かに思うのだが、運任せのゲームでもあそこまで負けるのはいくら何でも不自然だった。


 トランプを延々やって、飽きた頃には皆眠気が来ていたので、一般の家には不自然なやたら広い部屋で雑魚寝をすることになった。布団に倒れ込むとすぐに眠気がやって来た。しかし問題はその晩の夢だ。


 その家の中にいるのだが、夜に寝たはずなのだが外には黄金色の光が差し込んでいる。時計を見てもそんなものが見える時間ではないのでこれは夢だなと判断した。


 そんな夢の中で、周囲を見渡すとあの時ゲームで負け続けていた彼をなにかの光が包んでいた。神々しい……と思ったのも一瞬で、なんだかそれが酷く恐ろしいもののように思えた。


 それを見ていてしばし経ったところで目が覚めた。寝たときのままの雑魚寝状態で、窓からは今度こそ本物の朝日が差し込んでいた。今度は本物の朝だと思ったところで寝ていた子達も一人一人目を覚ましていった。


 それから別に何かあったわけでも無く中学に進学して、平和に過ごしていたのだが、あの時光に包まれていた子、彼だけがやたらと成長が早かった。体力的なものだけでなく、テストの点数も一気に上がり、ハッキリ言えば落ちこぼれだった子が、進学すると学年トップを取ることも珍しくなくなった。


 ただ、彼に勉強のコツを尋ねた子が居たのだが、彼の返答は「テストをやってると神様が答えを教えてくれるんだ」と言い、家で勉強などは一切していないのだという。


 彼はその町の進学校に進んで、それから関わることもなく、高校を卒業すると都市部の大学に進学して、そのまま就職をした。


 これが一連の事実なんですが、今も両親が時々地元に戻って再就職しろといってくるんです。その……こういう言い方は良くないのかもしれませんが、あの家に潜んでいた彼を優秀にしたあの光なんですが、どうしても良いもののようには思えないんですよね。私は戻るべきなんでしょうか?


『それは貴方が決めることですが、人間、自分が自力で得る以上の力を持つのは良いこととは限りませんよ』


 そう回答しておいた。返信が一回あって、どうやらあの時優秀だった子は、町の中でも悪い意味で評判の大人になってしまったのだそうだ。それもあって悩んでいたが私の返信で帰らないことに決めたらしい。


 それが何だったのかはさっぱり分からないが、おそらくその彼は犠牲になったのだろうと思わされたのだった。

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