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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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大学時代の元カレが引きずり込もうとしていたところ

 その日、夕方にまとめてSMSが届いた。せめてメッセンジャーで送ってくれよと思いつつ、よくSMSにこれだけの長文を書けたなという長さの分をいくつも送ってきている。


 一応は怪談ということでそれを読ませてもらった。


 私の元彼氏は田舎から出てきたのだとしきりに言っていた。十両編成の列車を初めて見たときには驚いたなんて言っていたのを笑い話にしていたので、何処まで本気か分からないが面白い人だなと思っていた。


 大学生活の間は順調に交際が進んだ。これといって我儘を言うわけでも無く、時には過去問を持ってきてくれたり、ノートを見せてもらったりもした。無事にそこを卒業したのだが、就活の時に彼が地元に戻るのではないかと不安を告げると、『いや、俺はこっちで就活するよ』と言ってくれ、一安心して彼の就活を見守っていた。


 彼は無事それなりの企業に就職出来て、自分も名の知れた……とまではいかないが、知っている人は知っている、業界内では有名企業に就職出来た。


 彼とは順風満帆な人生が送れると思っていた。ところが、内定が出たからと、二人で一回実家に挨拶したいと言ってきた。彼の実家は田舎で、なかなか行くのが大変そうな場所だが、そこで就職するはずもなく、年に数回訪れれば良いだろう場所なのでその申し出を受けた。


 実家に紹介したいと言うことはそういうことだと思って覚悟を決めて彼の実家に電車を乗り継いでいった。新幹線は途中までしかない、ローカル線に揺られながら彼の実家まで時間をかけていった。


 あまり頻繁に来れるところじゃないなと思いながら、駅からしばし歩いて彼の実家に着いた。田舎なのでバスが頻繁に来ないのは仕方ないが、送迎くらいしてくれたら良いのにと愚痴りたくもなった。


 だが、たまに我慢するだけだと自分を押さえ込んで、必死の作り笑顔で彼の家を訪れた。義両親は大変理解のある人で、東京で就職する息子を喜んでいた。


 良い人だなあと思いながら彼の実家での滞在をしたのだが、一つ引っかかることがあった。一度だけ、彼の先祖の墓に参ったのだが、その時に義母が『良かったねえ、骨を埋めてくれるんだって』と一つの墓に話しかけていた。


 神も悪魔も信じてはいないのだが、なんだかその発言にエゴのようなものを感じた。ただ、自分が死ぬのはまだまだ先だし、死んだ後の遺骨が何処に埋められるかにさほど興味は無いので聞かなかったことにした。


 そうして彼の実家から帰ることとなったのだが、駅までは彼の父親が送ってくれた。運転が荒っぽいなあと思いながらも通行量が少ないので無事駅に着いた。


 そこから時間をかけて東京に帰ったのだが、それからが問題だった。夢の中に知らない老人達が出てくる。男女問わず、結構な歳をして居るであろう人が、毎晩夢の中に出てくるのだ。


 ある時、子供が自分の上にドスンと飛び乗る衝撃があり、それで目が覚めたのだが、胸の周辺が赤くなっている。夢だったはずなのにどうして……と思い彼氏に相談をした。


 するとあっさり『そりゃあCちゃんだなあ、あの子も気の毒に、幼い頃に亡くなって墓に入っちまった。しかし皆歓迎してくれているよう出しよかったじゃないか』と言われた。


 その言葉にゾクッとして彼と付き合った年月も関係無く関係を断った。自分もあの一員になるのかもしれないと思うと耐えられなかった。アレが誰なのかは知らないが、どこかあの墓には言っていた人たちだろうと理屈ではない確信があった。


 彼と別れてからはそんな夢を見ることが無くなり、新しい恋人も職場で見つかって、今は主婦をしている。あのまま彼の家に居たらどうなっていたかと思うとゾッとするそうだ。


 もう関係のない人なのだそうだが、今の彼の実家に行くと歓迎はしてもらえるのだが、あの男のせいで今も不安になってしまうらしい。


 風の噂で、彼は実家に帰ったのだと友人から聞いた。どうも今となっては無理矢理彼の地元に連れて行かれる予定だったのではないかと思うと怖くなる。無事別れて良かったのは不幸中の幸いだったと書かれていた。


 根拠は夢しかないので実際にどうだったのかは不明だが、もう彼とは連絡が取れないのだそうだ。私に『田舎とはそういう風習が当たり前なのですか?』と最後に問いかけられていたので『そういうところはごく一部ですよ』と返信しておいた。今もそういったことを考えるところがあるのかと思うと、少しだけ怖くなる話だった。

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