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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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幼い自分が呼ぶ夢

 その日はせっかくの連休だというのに、通話アプリの音で目覚めることになりました。SNSで連絡先を公開するのは電話番号を公開していないにせよ考え物だなと思いました。


 話によると、今現在悩んでいることがあるそうなのですが、なんだか彼は言い淀んでいました。何か後ろめたい様子を察してなだめるように話を聞きました。心の中ではカウンセラーじゃ無いんだぞと思いながらも話を聞き出します。


 その日、どうにも気分が悪かった。職場ではギャーギャーうるさい上司に、成績の良い同期、決まりにうるさい情シスと何かと細かいことを言ってきていた。いつものことなので聞いているか聞こえないか微妙なレベルでいい加減に聞き流していたのだが、その中にはプライドというものを傷つけるものがあった。


 時代錯誤と言われようが男にはメンツがあるものだ、嫌味も自慢も等しく精神に負荷がかかった。


 その日、帰りにちょうど通り道にある立ち飲み屋により、結構な量の酒を飲んだ。飲まなきゃやってられないという気分でビールとハイボールを数杯飲んだ。元来酒に強くもないので何杯飲んだかは詳しく記憶に残っていない。


 ただ、気が付くと公園のブランコにいた。自嘲気味に、リストラされたサラリーマンのようなことを夜中にしていると思いながら、ブランコから降りようとした。その時背中から押す力がかかった。ブランコは揺れていく。毎回戻ってくるときに力がどこかからかかり、ブランコは加速していく。


 始めは酔っているのかと思ったのだが、明らかに不思議な力が徐々にかかっていっている。こんな事があるはずはないと思ったのだが、ブランコは停まらない。


 そこで思い切ってブランコが前に向いて押されたときに飛び降りた。何とか着ているものに傷は付いたし、体も節々が痛かったが、無事に公園の敷地に降りることが出来た。


 災難だったなと思いながらアパートに帰宅すると、新しいスーツを用意してから寝た。するとその晩夢を見てしまった。


 その夢の中ではあのブランコがあった公園に立っていて、ブランコの横にまだ幼いであろう子供がいて、こちらに向けて笑顔で手招きをしている。なんだか妙にその笑顔に邪悪さを感じずにはいられなかった。


 アレは誰だと思いながら、夢から覚めるのを待っていると次第に意識が遠くなって、目が覚めると朝だった。


 また出勤して、数日普通に過ごせたのだが、それからたまに嫌味や自慢を聞く度に気が付くとあの公園にいた。滑り台のこともあったし、鉄棒のこともあった。とにかく公園の遊具の前で気が付いて帰ると少年がこちらに手招きをする夢を見た。


 それを何度も見て次第に気が付いたのだが、その少年の顔は幼い頃の自分だった。どういう意図で呼んでいるのか、何故幼いときの自分なのか、さっぱり分からないのだが、どうすればいいだろうか?


 そんな意味の話だった。そんなことを言われても分かるはずもないのだが、どうやら文章には酒を飲んで潰れた後にその夢を見ているというので、いったん酒から離れてはどうかと進言させてもらった。


 彼は酒に未練は大いにあるようだが、オカルトの類いは不気味で仕方がないので禁酒をすると決めてくれた。


 後日、メッセンジャーに酒を飲まないとあの夢を見なくなったと送られてきた。


 私はその話を聞いてから、翌年の正月、彼がどんな生活をしているか知らないが、酒の席で飲酒を断れただろうかとふと気になってしまう。

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