夜に出てくるモノ
その日の前日、PCに向かって作業をしていたところ、眠気が来たので少し目を瞑っていたら窓の外が真っ暗になっていた。寝てしまったのかと思いながらディスプレイを見るとメールの着信マークが出ている。
こんな時間に送ってきたのかと奇妙に思いつつメーラーで新着メールを確認した。
『こんな時間に申し訳ありません、夜にしか送れない物ですから失礼します』
そんな一文からメールは始まっていた。ソレは奇妙な経緯でこのメールを送ってきた理由となっていた。
最近夜に明かりを消していると部屋に幽霊が出るんですよ。夜に部屋を暗くするといつの間にか部屋の中央付近を光る爺さんが浮かんでいるんです。顔にはまったく心当たりがないんですが、とにかく出てきます。
はじめはどうにかしようと思っていたんですが、毎回灯りをつけるとその爺さんが消えるんです。それでじゃあ夜に灯りをつけっぱなしにしておけば爺さんが出ないと気が付いたんです。
ですのでこういった時間にも眠れないんです。そんな事情からこんな時間にメールを送ったことをご容赦願います。
今住んでいるのはアパートの一室なんですが、瑕疵物件でないことは不動産屋に確認済みなんです。ソレでも爺さんは確かに出てくるのでいつも灯りをつけているんですよ。その爺さんに会ったことはないんですが、どうしてこの部屋に出てくるのか分からないんです。
盛り塩やお清めの日本酒なんかは試しましたが、爺さんは変わらずに出てくるんです。一回なんて塩をなめながら日本酒を飲んでいました、随分と図々しい方のようなんですよ。そう言ったものから身を守る方法はありませんか?
私はそんなメールを受け取って随分と思案した。対策をしても聞かないとなると結構面倒なことになる可能性が高い。お祓いなどもあるだろうがおそらく引っ越した方が安く付くだろう。
正直に言えば引っ越しをオススメしたいのだが、瑕疵物件ではないのにそんなものが出ることがあるんだろうか?
そう疑問に思いメールに記載してあったアパートを検索した。するとマップ上に住所が表示されたのだが、最近は便利なことに住所を入れると地図まで表示してくれる。そこであることにふと気が付いた。
メールで返信するときに『井戸をきちんと手続きに従って処理しましたか? 不動産業者の方に聞いてみてください』と書いて送った。
数日後にメールが返ってきたところによると、井戸があったそうだが手続きが面倒で埋めてしまったのだそうだ。爺さんが出てくるという申し出は今まで無かったが、噂を流さないのなら当社の持つ別の物件への引っ越し費用は出すという申し出があったので、それに乗って引っ越したのだそうだ。
マップを見たときに、近くに水源がないのが気になったのだが、やはり井戸を埋めていたらしい。
このメールを送ってきた人は解決となりそうだが、またその部屋に住む人はどうなるのだろう? メールにどこかは書かないでくださいと書いてあったが、そこに住む人が平穏に過ごせることを祈るばかりである。




