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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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無礼な人とその部下

 私はその日、日の出前に目が覚めた。メールチェックをしておこうかとPCを起動してメーラーをチェックしたところ『見てほしいものがあるので添付ファイルをチェックしてください』とだけ書かれているメールが届いた。


 jpgが添付されているが、用心のためにマルウウェアかスキャンをかけてから、そういうものを開くようにしているlinuxマシンに移動して開いてみた。


 画像自体に悪意はなかったのだが、それに映っているものが問題だった。ナニカ妙に暗い場所らしきところに、懐中電灯かLEDライトか何かで照らされたお札が映っている。見たことの無い……おそらく文字だろう……ものが書かれている。


 なんとなく、根拠はないのだがコレはな額見ておいていいものではないと思った。ひとまず画像をAESで暗号化してそういう呪物を突っ込んでいるストレージに入れて、メールの内容を再びチェックした。


 なんでもそれによると、家を越したときに家族に体調不良が続けて出たので、家の中に何かがあるのかと思っていたら、何処にも見つからないので屋根裏までチェックしようとなり、そこで見つけたのがこのお札だそうだ。


 もうすでに剥がしてしまったのだが、家族の体調不良は相変わらず続いているし、このお札を処分したいのだがどうすればいいかというないようだった。


 まず写真から良くないものを感じられるほどのものなので、しかるべきところでお焚き上げをした方がいいと返しておいた。それから一緒にお清めも受けておいた方がいいと返信しておいた。


 そうしてメールを返したところ、家を出ようとしたところでメーラーが音を立てた。なんでもお金がかかることをしなければならないのかという内容だった。


 私は『無理強いはしませんが安心料だと思いますよ』と返しておいた。この人も端からそういったものは信じていないのだろうが、気味が悪いのでこんな写真を私に送りつけてきたのだろう。メールごしに解決出来るとでも思ったなら甘い考えだと思った。


 それを送って数日後、その方から続報が届いた。なんでもお焚き上げとお清めを受けたところ、家族の体調不良はすっかり良くなったのだが、部下が一人無断欠勤をしているそうだ。偶然とは思えないタイミングなので、何か障りがあったのではないかと思っているそうだ。


 その部下は厄介ごとを進んでやるタイプだったので欠勤されては困るという内容だった。


 私はそれを読んで、ああ、その部下に恨まれてたんだな。とは思ったものの、多分あのお札を貼ったのはその部下かその関係者だと書きたかったが、それを抑えて、『事情があったのでしょう』と返信しておいた。


 それからしばらくして、部下は両親の介護を理由に離職したとメールで届いた。自分のせいだとは微塵も思っていないメンタルの強さには感心するほどだったが、もはやどうしようもないことなので『あなたのせいではないですよ』と心にもない返信をしてそれきりだ。


 その後彼の部下がこなしていた厄介ごとを誰が引き受けたのかは分からないが、恨みは買わないにこしたことがないなとつくづく思うのだった。

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