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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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少年時代の遊び場にあった石碑の話

 その日、帰ってきたのでもう寝ようとしたときだ、スマホの音が鳴った。眠気がキツかったので通話の音かメッセージの通知か分からず、それで目が覚めることもなくそのまま寝てしまった。


 その結果、目が覚めたときにはPCの方にメールがたっぷりと届いていた。どうやらスマホの方を見ると通話アプリに何個もの着信履歴が残っていて、最後にメッセージとして『聞いてもらえないようなので経緯をメールで送っておきます』と送られてきていた。


 いや、メールに目を通すようにはしているが、そんなことを言われても困る。しかしPCの画面には結構なナンバリングの付いたメールが来ている。タイトルに連番を振るほど長い話なのかと嫌になったものの目を通しておこうと読んだ。その結果になる。


 まだ昭和の時代、田舎で暮らしていたが、そのときに奇妙な事があった。学校という小さなコミュニティが全てで、当然ネット環境は無い、そんな環境で暮らしていたときだ。


 普通の生活を送っているつもりだったのだが、治安が悪い時代だったし、当時はゲーセンが不良のたまり場となっていて遊べなかったのに、家の中でゲームをやっていると親から外に出ろと小言を言われる。そんな環境で友達の集まる遊び場に行った。


 そこは広場……というか、厳密に言えば昔町に住んでいた人がすごいことをしたので、その記念碑があるらしい。誰が何をしたのかは知らなかったが、大人は名物だとでも思っているのか、その石碑の前を綺麗にしてあったので遊び場としては十分だった。ご丁寧に年寄りが見に来たときのためにベンチまで置いてある。遊び場を作ったんじゃないかと思うような場所だった。


 そこでよくいる子達が遊んでいた。暇つぶしにボールを蹴ったり、ベンチに座ってマンガを読んだりしている。親たちからすれば眉をひそめられそうだが、当時の現実はそんなものだった。


 そこで暇つぶしに家から失敬してきた茶菓子を食べつつ眺めていた。皆が自由に出来る空間だったので、のんびり見ていた。途中で一人が一緒に遊ぼうというので茶菓子を入れていた鞄を置いて皆で人数が足りないながらもサッカーをしていた。当時はスポーツ漫画も多かったし、サッカーも人気があった。


 そのときには何も起きなかった。一人が蹴ったボールが明後日の方に飛んでいって、大きな記念碑にあたったときは、皆壊れてないよなと怖がりながら近寄ったのだが、傷一つ付いていないので問題ないだろうと安心してそのままサッカーを続けていた。


 皆そんなことをしてから疲れ切ってお開きとなった。皆家に帰ると言うことで、宿題を残しているやつは嫌そうな顔をしながら帰っていった。自分はと言えば、お菓子を持ってきていたので鞄に入れたまま持ち帰った。


 そうして家に帰ると、母親が怖い顔をして出迎えてきた。それから、棚にあった茶菓子がなくなっていたことに文句を言いつつ、鞄を見せて見ろと言われた。


 渋々鞄を渡すと、中に入っている茶菓子の袋を撮りだしてこちらに見せた。そこには空っぽの袋があった。食べかけてサッカーをしていたのにその袋の中には粉一つ残っていない。


『全部食べたのか?』


 そう聞かれたので『全部は食べてない』と言ったのだが、信用してもらえないかと思ったら、その言葉に露骨に不安そうな顔をして言う。


『アンタ、あそこで遊んだろ』


 そこがどこだかは言われなかったが、なんとなく空気であの場所のことだと分かったので頷いた。すると拳骨を一つ落とされてから言われた。


 なんでも、地元の銘菓であるそれはあの石碑が作られた人の好物だったらしい。あそこにそれを持っていくと不自然に減ったり、無くなったりすることがあるらしいと言われた。


 それから、罰の当たるようなことはするなよと言われて解放された。ただ、それだけのことだったのだが、翌日、その日だけだがあの時石碑にボールを蹴ってあててしまった子が休んでいた。


 その日を境に、多少は家でゲームをしていてもいい時間が増えた。外に遊びに行くときに持っていた鞄にお守りを一つ縫い付けられるようになって、それからおかしな事は起きなかった。


 ただ、あの石碑に刻まれた人物が本当に立派な人なのか分からないのだと書いてあった。


 私はメールに書かれた情報からその石碑が代替どこのものか当たりを付けて、地元紹介という感じをした素朴なサイトに石碑のことも書かれていた。


 なんでもそれは昔あった飢饉の時に作られた鎮魂のための石碑だと書かれていた。私はそのメールに、気にしない方がいいですよとだけ返信しておいた。世の中知らないならその方が良いこともある。それに彼も地元を離れて就職したと書かれていたのでもう縁のようなものも無いだろう、知らぬが仏ということで、そのメールを送ってきた彼には安心してもらうようにした。

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