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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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運命に導かれ

 そのメッセージは突然届いた。こういう事はよくあるのだが、いつも届くのは公開しているメッセンジャーやメールアドレスなのだが、その時は電話番号のみで遅れるメッセンジャーで届いた。


 始めは誰か知り合いだっただろうかと思ったのだが、よく考えてみるとその時操作しているのはサブ回線のスマホだ、知り合いに番号を教えた覚えは無い。


『読んで頂けますか?』


 一応怪談だそうなので私は話を聞くことに決めて、送っていただいた。文章のみで頭に景色が浮かばなかったのだが、大体以下のようなモノだ。


 なんでも彼女が親友達と旅行をしていた時のこと、夏ということで北国に行こうと東北某県にみんなで向かったのだそうだ。海外に行くというお金持ちのみんなを羨ましく思いつつも、大学の卒業旅行だから行かないよりは、ということで思い出を残すためにみんなで電車に揺られながら旅に出た。


 随分と時間はかかったものの、飛行機で海外に幾代は早いであろう時間に目的地に着いた。友人達と観光をして、それなりに楽しんでから旅館に行った。


 予約していたとおり部屋に通され、みんなで荷物を置いてその日に買ったお土産や名物だというものを見ていた。その時、一つのかんざしが出てきた。誰の物か訊ねても誰も買っていないと言う。


 みんな揃って行動をしていたのに誰かが買ったのに気がつかないというのもおかしい。


 どうしてソレが荷物に混じっていたのだろうと疑問に思ったのだが、旅館にあったものでもないし、ソレは持ち帰ることとなった。持ち帰ったのはそのかんざしが出てきた子だった。


 それから残りはモラトリアムのロスタイムに入ったのだが、旅行から帰ってきて、あのかんざしを持ち帰った友人の対応が悪くなった。遊びの誘いにもほとんど来ず、みんなで飲もうと言ってもその子だけは体調が悪いからと言って欠席だった。


 ただ、後は卒業を待つばかりだったので就活も終わっているし、就職すればみんなで集まる機会も減るだろうと、付き合いが悪い友人の部屋で飲み会をすることになった。本人の家でやるなら都合も何もないだろうし、時間は限られているので多少無理をしてでもみんなで同じ思い出を作りたかった。


 ただ、その子のアパートに行くと、中からは明かりが漏れているのだが、なんだかその明かりが妙に暗い、まるで豆球しかつけていないような明かりだった。


 ノックをすると『入っていいよ』と聞こえたのでみんなで中に入った。そして驚くことになる。薄暗い部屋にいる友人はもう引っ越すように荷物を段ボールにまとめてあり、その事を聞くと彼女はこの前旅行に行った県に引っ越すのだという。


 全員が東京で就職出来たのを祝い合ったのにどうしてかとみんなで質問攻めにしたのだが、そこに運命の人が居るからとだけしか答えなかった。彼女はそんな情熱的な恋愛をするタイプだと思っていなかったので全員が驚いた。


 困惑しつつ、就職はどうするのかと訊ねると、向こうで養ってもらうのだと言う。彼女の実家は西日本なので実家に帰るというわけでもない、養ってくれるとなるとその『運命の人』なのだろう。


 結局、彼女からそれが誰かを聞き出すことは出来ず、就職と共に友人達は新しい生活を始めてしまい、彼女に何が起きたかは分からないままだ。就職してからの住所は例の彼女以外だけに教えておいた。なんとなく、彼女に招かれたら反応に困るのは予想が付いたからだ。


 そうして彼女は一人の親友をなくしたのだという。あの子が何の影響でそうなったのかは分からないが、なんであれ彼女が親友だった時もあるので、出来ることなら引っ越し先で幸せに生活していて欲しいのだということだ。

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