表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪談集「暗中」  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/76

線香を供える祖父母

 私はその日、とある神社に参拝していた。時折平穏な日々を過ごせるようにお願いしたりしているところだ。そこから帰ってきてPCをブートするとメーラーを起動した瞬間に大量のメールが届いていた。


 内容としては、最近身の回りで起きる奇妙な事を何とかしたいというモノだ。私は何でも屋ではないのだがなと思いつつ、目を通してみた。


 最近になって祖父が認知症になってしまったことから始まるという。祖父の行動が少しおかしいなと思っていたら、あっという間に症状は進行したらしい。


 始めは同居している家にあった仏壇に線香をあげているのを見るくらいだったのだが、普段は神も悪魔も怖くないという態度だったので少し奇妙に思えた。


 それから程なく、昼夜関係無く仏壇に線香を供えることになり、夜は火事の危険もあるからやめてくれと言うと、数日間早めてくれるのだが、すぐに再開してしまう。そして線香を供えながら泣いているのだ。


 祖母はまだ存命で、誰に対して祈っているのかと聞くと、昔不義理をした友人が夜になると自分を責めてくると言う。


 いつ頃のことかと聞いてみると戦後しばらくしてから、まだ治安が悪い時に混ぜ物をした酒を売りつけたり、質の悪い米を上等な品だとして売ったらしい。当時はとにかくものが無かったのでそれでも買ってくれたのだという。


 だが、祖父はそれを酷く後悔しているのか、しょっちゅう仏壇の前で泣いていた。


 その後、祖母まで同じようなことを始めたのでまいってしまった。祖母とは何の関係もないはずなのだが、二人揃って仏壇の前で泣いているのを見る時が滅入る。


 始めは何とか認知症の専門病院にかからせたのだが、医師も首をひねるほどに正常だという結果が出た。そのときは『このお年で随分しっかりしていらっしゃいますよ』と言われてしまった。


 ということは認知症ではないのだろうか? だとすると昔の友人が枕元に立っているとでもいうのだろうか? なんとも恐ろしい話になってきそうだった。


 ただ、それが始まってから一月と少し、祖父母共にピタリとそれをやめた。怖々とどうしたのかと訊ねると、『アイツがこの前夢の中で、自分はもう行くから線香は要らん』と言ったという。


 そこでふと考えたのは、おかしな行動がで始めてから四十九日くらいが経っている。ということはその昔の友人というのは……


 一応解決はしたのだが、それからも祖父は仏壇に昼間、線香をあげて拝んでいるようになった。夜にするほど危なくはないので多めに見ているが、何とか今は祖父母共に落ち着いているらしい。


 昔の祖父の交友関係から、誰に対して不義理を働いたのか調べようとしたのだが、何しろ半世紀以上前のことなので調べようが無い。


 内容は以上で、最後に『認知症が進んでいるんじゃ無いかと不安なんですが、検査をしてくれる病院を知りませんか?』と書かれていた。


 私は医療関係者でもなんでもないので、そんなことを聞かれても困るのだが、ちょうど知っている病院の一つに認知症の患者を積極的に受け入れている病院があったのでそこを紹介しておいた。未だに返事は来ないが、この方の祖父が平穏に過ごせていることを祈っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ