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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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腕に残った衝撃の跡

 その日はのんびり寝ていたのだが、それが原因だったのか、平穏を乱すようにメールが届いた。そこに書かれていたのは遊び半分で肝試しに行った事への後悔だった。


 俺が二十歳を超えた時からなんですがね、二十歳を超えたってことで、もう成人済みだった連中と宅飲みをしたんです。店だと小うるさいことを言われそうだったんで、酒を持ち寄って俺のアパートをたまり場にしてみんなで飲んだんです。


 そりゃあもうがぶ飲みでしたよ、いや本当に成人前に飲んではいないんですがね、とにかく酔っぱらうまで飲んだんですよ。そうしたらその時に仲間の一人が『そういやこの辺の墓場に幽霊が出るって噂あったな』なんで言い出したんです。


 じゃあ皆で見てこようって事になって、多分酒のせいで気が大きくなっていたんでしょう、みんなして墓地に忍び込んだんですよ。


 そこは別に有名というわけではなく、ただ単にデカいと言うだけで、これといって有名人が眠っているわけではない。だから自分含め全員が舐めきって墓地に入った。


 墓地の中はごく普通に暗いだけで怖さのようなものは感じなかった。それもあって一人が墓地の奥まで行って、そこで証拠の写真を撮ってこようとなった。


 その事でおかしな事があったかと言えばそんなことはなく、全員問題無く墓地の奥、無縁仏のあるところまで言って写真を撮ってきていた。


 全員が軽々終えてしまったので、酔っているとはいえノリが冷えてしまい、つまんねーなと皆思ったらしく解散となった。それだけで終われば良かったのだが……


 その肝試しの後から、参加した連中に生傷が絶えなかった。道で転んで怪我をしたり、階段で転んで打ち身を作ったりと怪我が絶えなかった。


 問題は怪我をした連中曰く、普通になんでもないところを歩いていたのに後ろから誰かに突き飛ばされるように転んだという。だが、その時に背後に誰かがいたと言うことはないのだそうだ。


 皆がうっすらとあの肝試しがマズかったんじゃないかと思いつつ口に出せずにいた。そうして一人また一人と怪我をする人が増えていったのだが俺もその例に漏れなかった。


 ある時道路を歩いていると、横から急に衝撃を受けた。勢いで転んでしまい、半袖だったために腕に傷を負うことになった。それだけなら誰かのせいにもできたのだろう。問題はその怪我のあった方とは反対側、そちらには自分を突き飛ばしたナニカの手形が残っていた。


 その手形がどう見ても子供のものにしか見えない。しかしその時に子供などその場にいなかったし、どうして自分の腕付近にそんな手形が憑いているのか分からない。想像するのは、子供が精一杯に手を伸ばして必死に自分を押している映像だった。


 そこからもう急いであの肝試しをした墓地を管理する寺に行き、全部ゲロって延々お説教をされた後で念仏を唱えさせられた。


 それで自分にはおかしな事は起きなくなったのだが、友人達には未だに怪現象が起きている。連中にも寺に謝りに行って欲しいのだが、お説教は嫌だからと行っていない。無理にでも連れて行くべきだろうか?


 メールにはそう書かれていたのだが、無難に『無理強いすることはないでしょう、少なくともあなたは助かったんですから』と突き放すような返事をしておいた。そんな罰当たりなことをして反省もしていない連中を助ける義理はないと言うことだ。それ以後、返事は来ていない。

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