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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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見えない猫の鳴き声……

 その日は順調にコトが進んだので気分良く帰って来たのだが、順調だったのでスマホを見ている暇がなかった。そのメールに気が付いたのは帰宅してから水を飲みつつスマホを開いたときのことになる。


 そのメールには困っているのだと書かれていた、おおよそ子のような内容になる。


 私もいい年なので一国一城の主になろうと妻と息子を説き伏せて、職場からはやや遠いところに一軒家を買いました。家が出来上がったときは家族揃って感動をするようなテンションの上がり方だったんです。


 しかしそこに暮らし始めて妙なことが起き始めたんです。息子が夜に起きて、私や妻を起こすでもなく歩いて何処かへ行っているんです。始めはトイレか何かだろうと思っていたんですが、それがよく起きているようなんです。


 ある時私は前に使っていたスマホのカメラで動体検知機能を使い、何かが通ったら撮影するようにして、それを部屋の出口に近いところに立てかけて寝ました。


 翌日にはやはり息子が起きだして部屋から出て行っていました。悪いことをするような年でもないのになと思いながら、『夜になると何かあるのか?』と聞いてみましたよ。


 すると息子は『猫ちゃんがいるんだ!』と言います。いくら持ち家だからと言って猫は少なくともまだ飼っていませんでした。まさか猫を見に外に出ているのかと思ったんですが、息子が言うには猫はキッチンに出るんだと言うんです。


 何処かに抜け穴でもあるのかと休日に息子の世話を妻に任せてキッチンの隅々まで調べたんですが、それらしいものは何も出てこないんです。


 おかしいなと思いながらきっと気のせいだろうと諦めました。猫が入る隙間なんて何処にもなかったんです。


 でも、その翌週、妻から愚痴を言われました。何でも掃除機をかけていると何か動物の毛のようなものがパックの中にたまってすぐに詰まると言います。


 あの猫の話が夫婦の頭をよぎっていました。ついには休日前の夜にキッチンで寝ずの番をして見ることになりました。もし息子が来たら猫の正体が分かると思ったんです。


 そうして猫が出るか気になったのでじっくりと待っていたんですが、やはりというべきか息子はキッチンにやって来ました。


 見つからないように暗くした隣の部屋から何をしているのかこっそり覗いていたんですが、息子は部屋の中央で座ってあぐらをかいているように見えました。


 何も居ない……そう思ったんですが、私が何も居なかったと片付けようとしたとき、二つの光が息子の足の上に見えたんです。それは何か獣の目のようでした。どうして光源がないのにあんなにハッキリと光っているのかは分かりません。ただ、それが『猫』と息子が呼んでいるものなのだと理解出来ました。


 放っておいていいはずはないので後日神社に行き、お札を一枚もらってキッチンに貼り付けました。おかげなのかどうか、とにかくそれを貼ってから息子が夜に起き出すことはなくなりました。


 ただ、お札が一月もすれば真っ黒になるので交換しているんですが、馬鹿にならない金額なので、どこか長持ちする魔除けがあるところはないでしょうか?


 メールにそう書かれていた。私は差出人の住所から見たのだが、そっと高名なお坊さんのいるお寺を紹介しておいた。


 メールを送ってきた方は一生ものとして家を買ったのだろうから、そこは昔刑場だったので引っ越した方が良いですよとは流石に言えないまま話は終わった。

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