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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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その橋の下の方に見える輝きは……

 せっかく寝ようとしていたのだが、間の悪いことにメールが入ってきてしまった。相手はきちんと確認されたかどうかのトラッカーを使っているようだが、普段使っているメーラーがそれを弾いていた。


 どうしてメールにそんなものを仕込んだんだと思いながらそれを開いた。そのメールの内容になる。


 僕が以前旅行に行って以来、おかしな事が起きるんですよ。その時は彼女と二人で行ったんですがね、観光地に行ったんですが、後になって知ったのはそこで命を絶つ方が多い場所だと言うことです。ぱっと見はただの橋なんですけど、どうやらそこで飛び降りて亡くなった方が多いそうです。


 そんなことは全く知らず、呑気に彼女と二人で星空を楽しんでいました。自動車で旅行をしていて、そこには駐車場もあったので、そこに止めて橋の上で星空を見ていたんです。


 夜空なんて大したものじゃないだろうと思っていた僕がそこでは驚きの光景が広がっているんです。満天の星空って言うのはあのことを言うんでしょうか? とにかく綺麗な星空というものを初めて見ました。


 いい景色だなと思っていると、彼女が橋の欄干を乗り越えようとしています。焦って引き戻すとハッとした様子になりました。どうしてそんなことをしたのか尋ねると、下を見たときに蛍が綺麗だったのでそこに行きたいと思った。どうして飛び降りて行こうと思ったかは分からない。


 そんなことを言っていました。そのわずか跡、彼女は悲鳴を上げました。僕はどうしたのかと聞いたんですが、彼女は僕にスマホを出すように言って、ポケットからスマホを取り出したらライトを光らせてとせがむので、スマホの背面ライト機能を起動すると思わず悲鳴を上げそうになったんです。


 先ほど欄干を掴んでいた彼女の手が赤黒い色になっているんです。いや、怪我をしたわけではないんです、何か赤黒い液体がベッタリと付いていたので、欄干にスマホのライトを向けると、彼女が触った付近に赤黒いものがペンキのようにそこだけ塗られていました。


『帰ろうか……』


 そう言って彼女と一緒に泊まっていた旅館に帰ると翌日になって帰ることになった。その時はそれだけだったのですが、後日、彼女からメールが届いた。


 なんでも、蛍が部屋の中に出るのだという。一匹くらい迷い込むことはあるんじゃないかと答えたんですが、数日続けて出てきているそうです。


 問題は今も彼女には蛍が見えていると言っています。もう冬だというのにアイツは蛍が部屋に出ると言うんですよ。


 もしかしてと思うと、実はあそこは命を絶つ方が多いのではなく、通りがかったときに蛍に呼ばれたんじゃないかなんて思うんですよね。


 彼女のことを何とかする方法はありませんか?


 しばし悩んでから、肝試しじみたことをするからだと思ったが、今更言っても無駄だろう。この手の話題にまともな人を紹介すると迷惑がかかるので、当たり障りない腕のいい心療内科を紹介しておいた。


 こういうわざわざ危険なことをする人を誰でも助けるわけではないし、私は霊能力者の紹介屋でもなんでもない、メールの返信は「幽霊の仕業なのにどうして!」とキレた文章が帰って来ただけだった。

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