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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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祭壇の土台には……

 その日は厄日と言っていい日だった、何かと急用ができたり、寒い中屋外作業もあった。そんなことがあったので帰宅後にPCを起動すると出てくる廃熱でさえ愛しかった。


 そんな時に来たメールのことだ。


 私はもう引っ越して長い、随分ととある村(検閲削除)で生活している。住人にも馴染んですっかり地元の人気取りだったが、そう思っていたのは自分だけだったらしい。


 ある日、そこに引っ越してきた若夫婦がいた。まあ予想が付くと思われるが旧来の風習には一切参加をしなかった。祭にでるでもなく、町内の清掃をするでも無い、ただ住人達のインフラにフリーライドをしていた。


 当然そんな夫婦に向けられる視線には好意を持ったものは無かった……と思う。


 そんな時、村の中で豊作を祈願する行事が行われた。もちろん私も参加したのだが、ソレは複数回行われた。田舎ではよくある儀式のようなものだ、村の産業の大半が農業なのでそういったことをするのだろうと思っていた。


 やることといえば御神体に向けて村の拝み屋をやっていたものが延々と言葉を紡ぐだけだ。これといっておかしな事は無く、村人の一人一人が前にある祭壇に供え物をして下がっていく、そんなことが何回も行われた。


 私も家庭菜園に毛が生えた程度ではあるが、そこで採れた野菜をいくらか供えた。そこまではごく普通の儀式だった。ただ、参加者が一通りお供えを終えると、その祭壇を力にまだ自慢のある連中が集まって持ち上げ、近くの広場まで担いでいった。わけも分からずそれについて言ったのだが、到着した広場にも村では体力のある連中が集まっていて、大きなたてに長い穴を掘っていた。


『ええか?』


『おう、全部終っとるわ!』


 明るい顔でそう言う老人達を見ていると、そこへ奉納されたものの乗った祭壇を穴に安置すると、皆してスコップを持ち泥をかけていった。一通り終わったところで『これで今年も大丈夫じゃな』と誰かが言っていた。


 その時はそう言う儀式なのだろうと思っていたのだが、問題はそれからだ、どうやらあの若夫婦は引っ越してしまったらしい。人に聞けば『若いもんは根性が無い』とか『馴染めんかったんやろなぁ』などと言っていた。


 ただ、そこで思い出さなくていいことを思いだしてしまった。


 あの時儀式に使った祭壇、あのように使い捨てにするのであれば土台は板をさして自立するようにしておくだけで十分だし、埋めてしまうのが前提なら何なら土台など必要無いだろう。


 だが、あの時の祭壇には立派に飾り細工のされた箱状の土台が付いていた。冷静に考えれば埋めてしまうものにはあまりにもったいない豪華なものだった。


 そして自分が引っ越してきてから、そう言った儀式が行われることは無かった。


 なんとなくだが嫌な想像が点と点と結んで線になり、画になろうとしていた。そこで深く考えるのをやめてアレはそういう儀式だったんだと思うようにしている。まさかあの中に何か(ナニカ)が入っていたなど考えたくもないのだから、誰かの犠牲の下に成り立つ村など考えたくも無い。


 と言うわけで私は今も村に住んでいます。ただ、あの一件から多分自分はまだ余所者扱いなんだろうなと思っています、現代にもそういうことはあるのでしょうか?


 私はこのメールを読んで嫌な想像がよぎったが、そっと『現代は法治国家ですから、そういったことは無いでしょう』と返信した。可能性がないとは言わないが、このメールを送ってきた方の安全のためにもその方が良いだろうと判断したのだ。

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