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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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疲労の理由は?

 なんだか妙に眠い日のことだった。休日だからとダラダラスマホを弄っていたら寝落ちした。目が覚めたときにメールの通知に気が付いてソレを確認した。メールは確認していない時を狙っているのかと思いながらソレを開く。


 内容は色々と最近怪異が起きている相談だった。


 私は大学進学と一緒に地元を出たんですが、とにかく都会に憧れていたんです。それで家賃が安いなって思ったところを見せてもらったら凄い田舎で、ここって東京なの? と思うくらいの場所ばかり紹介されたんです。


 なんとか山手線の駅に近いところを借りられないか探し回ったところ『告知事項はありますが……』と言って紹介されたアパートがあったんです。何とかそこなら仕送り込みでバイトをすれば住める家賃でした。


 大学を卒業したら出て行くのを条件に借りたんです。その時は知らなかったんですが、告知事項ってある程度人が住んだら無くなるんですね、多分向こうもソレが狙いだったんだと思うんです。


 そんな状態でしたが私も都会への憧れでそこに決めたんです。大学に行ってから勉強とバイトの日々が始まったんです。それで始めから結構単位を落としたんですが、どうしてこんなに大学の講義は分かりにくいんだろうって思っていたら友達が『バイトに時間をかけすぎだからじゃない?』と言ったんです。


 冷静に自分のバイト時間を考えると明らかに必要以上にシフトを入れているんです。スマホで講座を見ると夜職でもないのに結構お金が貯まっていました。ただ、そのせいで抗議の時に寝ることもあったんです。


 なんでこんなにバイトをして居たんだろうと思いながら帰ったんですが、部屋のドアを開けるときにその理由に気づきました。


 アパートに……帰りたくなかったんですよ。指摘されるまで考えもしなかったんですが、無意識に家に帰りたくないなあと思ってシフトを入れられる限り入れていたんです。


 それで休む時間も増やそうとシフトを減らしました。私の体調を心配していたのか向こうも減らすことに反対はされませんでした。


 ただ、それまでは疲れきって帰ると倒れるようにベッドに横になってすぐ寝ていたんですが、体力がある家に帰るとなんだか妙に眠れないんです。おかしいなあと思って目を瞑っていると、『きぃ……きぃ……』と音がするんですよ。


 その音で夜中に目が覚めたこともあって、部屋の灯りをつけると何も無いんですよ。音も灯りをつけると消えるんです。


 あの音なんですが、何か重いものが擦れている音なんですよね。周りをよく見ると、備え付けられていた室内用の物干しの金属に一カ所傷が入っているんですよ。そこだけなにかが擦れたような傷で……それでそこで何があったか想像がついたんです。


 ただ、出来ればこの部屋から離れたくは無いので何か対処は無いですか?


 なんとも答えようがないなと思いつつ、盛り塩と、二十歳を超えていると言うことなので清酒を供えてはどうでしょうと答えておいた。


 後日返信があり、『週一本のペースで日本酒がなくなりますけどあの音は消えました!』と喜びの言葉と共にメールが届いた。


 いくら安酒を選んでもそのペースで減ると結構な額になるのでは無いかと思ったが、どうやらシフトをいくらか増やして無理のないギリギリで対応をしているらしい。

 

 そこまでして東京にこだわらなくても……と思いつつ、一応は解決したようなのでそれでヨシとした。

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