林間学校で聞こえた咆哮
その日は本を読みながら眠気に耐えていた。本当にどうしてその日は眠気に耐えていたのか分からない、普段なら素直に寝ていただろう、そうしなかったのは怪異の書かれたメールが来たことから運命のようなものを感じた。
メールが届いた音を聞いた途端に目が覚めた。メールの内容は何とも陰鬱なものだった。
俺は昔小さな町に住んでいた。まあ言い方はどうあれハッキリ言えば限界集落だ。老人ばかりが揃っていて、今にも無くなりそうな村みたいだったが、何故か限界集落のまま存在し続けていた。
まあ友達と読んでいいヤツも数人いたので、子供の頃はそれほど不思議に思わず生活していた。どうしてこんなところに居付いているのかと言うものも中にはいたが、ほとんどが気にしていなかった。
高校に進学したときのこと、こんなところにも高校があるんだなと思うと同時に、人数が定員割れしているであろうに、よく経営が成り立つなと不思議に思っていた。なにしろ田舎の中の田舎と読んでもいい場所なので他所から来る生徒はほぼ居なかった。
潤沢な税金でも入れ続けられているんじゃないかと生徒の間では冗談半分に言われているくらいには奇妙だった。
そんな状態で過ごしていたのだが、高校で研修があった、と言っても少し離れたところにある林間学校のようなところで仲間と協力して一晩過ごすだけだ。別にどうってことはない、気楽に構えて研修に臨んだ。何しろ山の中にある施設も、その時住んでいる小さな村のような町からすれば大して変わらないだろう、見飽きた自然があるだけだとしか思えない。
その研修に一クラス全員で参加したのだが、外から来ている他に行き場のなかった連中は嫌がっていたが、地元の連中からすれば珍しくもない光景が広がっているだけだ。
退屈ないつもとそう変わらない生活をしてから寝ることになった。他所から来ていた連中はスマホを持っていたりもしたが、県外じゃないかなどと文句を言っていた。
夜も更けてきた頃、何か獣の鳴き声が聞こえてきた。アレは何が泣いているのだろうか? 珍しくもない野犬か何かだろうか?
なんだかそれも違うような気がした、タダとにかくうるさい咆哮が聞こえ続けたので、誰もが眠れなかった『アレなんだよ?』『知るか、狸かなんかが鳴いてんだろ』などと適当なことを言って寝ようとした。
幸い無理にでも寝ようとした甲斐はあったらしく、しばらくしてくると眠気がやって来た。ところがそういう音に慣れていない外から来た連中はどうにも眠れないらしい。
ようやく眠れるという頃に、ガチャッとドアノブをひねる音がした。トイレにでも行くのかなと適当に思いながらそのまま寝た。
翌朝のことだ、錯乱した状態の生徒が部屋の前に居た。それらは何やら不気味な叫び声を上げながら床に寝てゴロゴロ転がっていた。
先生がそれを運んでいるところを見てしまったのだが、どうにも昨晩の咆哮と関係がないとは思えない。皆でアレはなんだったのかと疑問を浮かべていたが、結論は出ないまま林間学校から帰ることになった。
帰った頃には叫んでいた生徒もすっかり正気に戻っていたが、気まずいのだろうか? あまり口数が多くなかった。
そんな状態だったので何かがあそこに入るのだろうと思う、分かればでいいのであそこにいるものの正体を教えて欲しい。
そんな無理難題が書かれていた。何しろこのメールには村の場所も林間学校の場所も書かれていない。何があったのかなど分かりようもないが、書かれている時期的にちょうど満月になるだろうかという頃だなと気が付いた。
そう言えば月には人を狂わせる力があると思われていた時代もあるようだ、なんとも奇妙な偶然だとは思うが、正直にそう答えていいものか分からず、私はただ黙っていた。




