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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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子供のお世話をするのにいいものは……

 俺がその日、休日ということでPCの整備をしていたのだが、データの整理中にメールが届いた。未開封のメールを残したまま整理終わりとするのはなんとも据わりが悪いのでそれを開いた。


 そこには何とも言えない話が書いてあった。


 僕は一応これでも品行方正で通っていたし、妻もおとなしい人だった。だからきっと平和な日々が続くと思っていたのだがそうもいかなかった。


 始めは当然のように平和な生活が続いていたのだが、妻が妊娠をしてから上を下への大騒ぎとなった。だがこれは幸せな騒ぎであって、文句を言うようなことではない。きっとこの先良い子が生まれて幸せな家庭を気付けるのだと思っていた。


 だが、子供が生まれてからが本格的に辛い日々の始まりだった。子供には何の異常も無い、いや、医学的に検査しても何の異常も無かった。


 だから性格のせいだろうか、とにかくせっかく生まれたかわいい息子が夜にグズって仕方ない。昼は保育園に預けているのでなんとかなっているが夫婦ともに酷い状態になりつつあった。


 その時はテレビをつけて子供あやしていたのだが、突然子供の機嫌が良くなった。ホッとして寝かしつけようと部屋を出ると大泣きをする。再び戻ると途端に泣き止む。


 一体何があったのだろうと思うとまた泣き出した。見ると妻がテレビのリモコンを持っていた。


「あ、ゴメン、あんまり好きじゃない番組だったから……」


 そういうので試しにテレビをつけてもらった。すると息子はニコニコした顔でテレビの方にまだちゃんと座っていないはずの首を動かす。


 テレビの方では、実際に会った凶悪犯罪特集というものをやっている。世界の連続殺人鬼の手口を解説しているところだ。


 まだ言葉も分からないだろうが、教育には良くないだろうなと思いテレビのチャンネルを変えた。途端に大泣きを始めた。とりあえず黙ってもらえるかと思ってチャンネルを戻すとニコニコした顔に戻った。


「ねぇ……」


 妻が何か言いたそうだったがそれを聞くと何とも嫌な結論に行き着きそうだったので僕も妻もそれ以上言わなかった。


 そして妻は翌日から変わった。休日だというのに朝から一人出て行った。自分に育児を押しつけて勝手に出て行ったことには腹も立ったが、こうもグズる子供だと無理もないかと思い直したのだが、妻は思わぬ状態で夕方に帰ってきた。


「ただいま、これでこの子も黙ってくれるんじゃない?」


 そう言って妻が出したのは大量のDVDだった。多くに心霊や残酷などと言ったタイトルが見える。話を聞けば、息子がこういったタイトルが好きなのではないかと一日かけて買い集めてきたらしい。


 そんな悪趣味な……と思ったのだが、それらをプレーヤーに入れて再生すると、途端に息子はニコニコしながらそれを見始めた。良いか悪いかは分からないが、とにかく息子が昼夜構わず泣き叫ぶことはなくなった。それは良いことなのだが……


「これ、何時まで見せるんだ?」


 そう僕が聞いたのだが、妻は平気で『あの子がきちんと喋れるようになるまでよ』と言った。


 息子がきちんと喋れるようになったときに、この大量のDVDを見てどんな反応をするかと思うと怖くてしょうがない。確かに息子が嬉しそうにしているのは事実だが、どうにも道を踏み外しているような気がしてならない。


 そう書かれていた。私へ『子供ウケのいいDVD作品を知りませんか?』などと最後に書かれていたので思わず『私は存じ上げません』と正直に返しておいた。その息子さんが大きくなったときにこの話を聞いてどう思うのかは気にならないでもないところだ。

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