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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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薄いものが出ていった

 その日は、もう寝ようとしていたときだ、意識がいったん落ちた。目を開けて腕時計に目をやると結構な夜中になっていた。これは大変だと思って寝ようとしたのだが、その時にメールが来ている通知が目に入った。


 PCの前で記憶を無くしていたので嫌でも目に入る。仕方ないのでメールを開くと根深い話が入っていた。


 俺は所謂因習村というところに住んでいた。別にそこで因習に巻き込まれたわけでは無い。ただ、起きてしまったことが深刻だった。


 親からは○○さんという地域の有力者の口利きで高校を出たら働くんだよと言われていた。そういう人生が普通なのだと思っていたし気にもしていなかった。


 だから小中高と成績なんて気にしなかった。精々気になったのは高校で留年しないかどうかくらいだった。


 そのままの生活をしていれば問題無いんだろうと思っていた。ただ、高校を卒業して紹介されたところで働き出してからだ。町の行事の費用として毎月給与からいくらか天引きされているのに気が付いた。


 気になったのだが、それが引かれているとしても悪くない給与だったのでやめる気は無かった。多少の代金を払えば問題無いだろうと思っていたのだが、祭が行われる気配は一切無かった。これも口利きの代金かと勝手に納得をしていた。


 しかし、就職してから働いているときに奇妙なものを見た。社長室の前を通っているときヒョロヒョロと何か白いものがドアの下から紙のように抜け出てきた。それをよく見るとどうやら蛇のようだ。


 蛇の抜け殻のような平べったいものがドアの↓の好きまからすリ抜けてくるのをポカンと見ていた。そこで唖然としてそれを見て固まっていると、上司から声をかけられた。こんなところでどうしているのかと聞かれたので今見たものを信じてもらえるか分からないまま言うと、上司は途端に慌てた顔になって戻っていった。


 そこから先は大騒ぎとなった。自分の同期とそれより後輩以外は大騒ぎをしている。アレが出ていっただの、アレがいなくなっただのと何かマズいことが起きているのだろうなとは予想された。


 職員には数日の休暇が与えられ、家で休んでいると、就職したときにコネを使わせてくれた大きな家で、信用取引をしていた株が暴落して大騒ぎになっているらしい。


 そこから先はあっという間だった。各所で問題が発覚し、その名家はあっという間に落ちぶれてしまった。


 ただ、その家が落ちぶれても決して集落の人は彼ら彼女らへの態度を変えず立派な人のように扱っていた。そして□□様が出ていったのじゃから仕方ない、なんて言う者もいた。


 就職先に困らなかったのは素直にお礼を言いたいが、どうにもあの家は良くないものを宿していたのではないかと言う気がしてならない。もしかするとあの時出ていったものは守り神のようなものだったのか? 何にせよもし村全体があの家一つに責任を預けていたとするならばさぞ気の毒な話だろうと思う。


 そんなことがあったんだが、何かそういった言い伝えを存じていませんか?


 私はしばし解答に悩んでから、『きっと偶然だと思いますよ』と答えておいた。検索したところそれっぽい怪しいところはあったようだが、不穏な伝承のようなものは見つからなかったのでそう返して終わりとした。

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