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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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お盆の日、まるで人が変わったように……

 気が付くと朝だった、比喩でもなんでもなく夜まで作業をして居たかと思っていたら気が付くと横になっていた。どうやら寝ていたらしいのだが、何が起きてどうやって寝たのかは分からない。


 ただ、気が付くとバッテリーをそこそこ消費したスマホの隣に寝ていた。スマホを見れば通知が来ていたのでPCで一通り消化をしておこうと通知が来ていたアプリでPCから見られるものはチェックしていった。


 その中のメールの一つだ。PGPで暗号化されていたので、てっきりソースコードでも送られてきたのかと思ったが、秘密鍵で復号したところ、中身は怪談だった。その内容は……


 私はある地方に住んでいたんですが、どうにも奇妙な事があります。普通に暮らせてはいたのですが、待ちの端っこの方、一件の廃寺があります。そこは住職も折らず管理もされていないはずなのですが、何故か朽ちること無く建っていたんですよ。昔から誰も管理してないなら崩せばいいのになんて軽く思ってました。


 不思議なのは誰も信仰なんてしていないのにその寺には近づくなとか、悪さをするなとか、なんかそこを怖がっているように言い含めてくるんです。奇妙な風習なんだなあと思っていました。


 ただ、ある年のことなんですが、お盆の季節に町の大人が集まってそこに行ったんです。何かしきたりのようなものがあると言っていました。何があるかは分からないんですが、なんだか皆妙に怖がっていました。


 そうしてお盆が来たんですが、大人達が廃寺の前に集まると、後から黒塗りの威厳がありそうな車が来て、ソレから降りたお坊さんが大人達を連れて廃寺に入っていったんです。何をするんだろうなと思ってましたよ。


 それからお盆が終わると皆大人は帰ってきました。なんだかやけにニコニコしていたんですよ。


 それで、私なんですが、不良とまでは行かないまでも、あまり良い子じゃなかったんですよね。親が二人とも放任主義だったので結構好き放題出来ました。


 ただ、そのお盆で大人が帰ってきてから、なんだか両親そろってガミガミと細かいことを口に出すようになってきたんです。普通そんなこと気にしないでしょと言うことも口を出してきました。


 ソレまでは箸の持ち方もいい加減だったのが、高校を卒業するまでには柄でもないお嬢様みたいになっていたんです。


 両親はあの廃寺に入ってから人が変わったように……品行方正な人間になったんですよ、それに合わせて私も立派な人間に育てたいようでした。


 思うんですが、あのお盆の後で両親は何かに取憑かれたんじゃないかって思うんですよ。普通あんなに人が変わったりしませんよ、それも一晩です。


 大学には行かせてくれると言われたので古さとからは逃げ出しました。確かに両親の教えは役に立ってますが、あそこに戻りたいかと言われれば戻りたいとは思いません。


 あの廃寺には一体何が居るんでしょうか? 良かったら調べて教えてください。


 さて、このメールを受け取った私は彼女の故郷だという町について検索をしてみた。ただ、その村について分かったことは、衛星写真で確認しても、地図で確認しても、その町には廃寺らしきものは見つからなかったし、特徴のある言い伝えも無かった。果たして彼女の両親は一体どこに行ったのだろうか?

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