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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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秘密主義の実家は……?

 その日は配信を見ながらうつらうつらしていた。眠いなと思いながらも配信を最後まで見るとそこでコテンと寝てしまった。配信も終わったし安心して寝ようとしたのだが、意識が落ちて僅かに経っただろうか、そのくらいでメールのt着信音で目が覚めた。


 PCと共有しているメールアドレスだったので、PCを起動してメールをチェックしておこうと思ったのだが、そのメールはなかなか闇が深かった。


 俺は褒められた生き方をしてこなかった。だからまあこんな目に遭うのも仕方ないかなと思っている。それでも待ちの連中がムカつくのは確かなので呼んで欲しい。


 昔からロクなことをしてこなかった自信はある。時には小学生になれば自分より下の学年の生徒に暴力を振るったし、高学年にもなれば駄菓子屋で待って、そこに来た低学年からお小遣いを『分けてもらった』事もある。


 中学に上がれば行動範囲が広がったのを良いことに違う学区の小学生からカツアゲのようなことだってやった。そりゃあそんなことをしていればロクな目に遭わないのは仕方ない。警察にグチグチ言われたのだって一度や二度じゃない。


 そんな俺を親は放任していて好きなようにさせていた。おかげで警察から身元引受人を頼まれたときも夜くらいまで待たされるような始末だ。放任と言うより放置と言った方が近いだろうか。


 そんな生活を続けていたある日、高校の話になった。どうせ自分がまともな高校になど行けるはずもない。刹那的な生活を送っていくだろうと思っていたのだが、親は妙に俺を高校に入れたがった。


 その高校が県外なので、『要するに俺に消えてくれってことか』と理解した。高校の入試は名前を書いてマークシートを雑に塗りつぶしただけで合格が来た。問題文なんて読んでないし、いくつ塗りつぶせばいいのか分からないような問題でも適当に塗って合格が出るのだから高校はお察しだった。


 入学後、周りの全てがヤンキーのような高校だったことを知った。その最下層で酷い目に遭うこととなる。


 その先、三年間は今までの報いを受けるような生活だった。そりゃあ酷い目に遭ったので親を随分と恨んだ。ただ、ここを辞めると他にどこにも行く場所は無い。選択肢もなくなんとか高校に通い続けて卒業式を迎えた。


 卒業式ではとてもこれから社会人になる連中がするべきでは無い格好で卒業をしていった。自分がその時は着崩した制服だったので特攻服で卒業式に臨む連中には勝てないなと諦めにも似た感情を持った。


 高校を卒業して、地方の工場へ住み込みで就職をした。なんとか企業誘致をしているところに出来る新しい工場での人材募集をしていたのでそこへ入ることが出来た。


 なかなかに怒鳴られもしたし、厳しい上司に理不尽な目にも遭った。それでもなんとか人並みの生活ができるようになったので、正月に実家に帰省というものをしてみようと思った。


 今までは実家に帰ろうなんて気持ちは全くわいてこなかったのだが、自動車を買えるようになるとなんとなく郷愁というものがわいた。親だって年を取っているだろう、くたばる前に顔を出してやるかという気分で実家への道に車を走らせた。


 だが、その途中、道路の具合がなんだかおかしい。あの寂れた村への道とは思えないような整備された道路になってきた。何か儲け話がわいて公共事業でもやったのかと思いながら車を走らせると、大きなダムに着いた。


 そこまで行くのに道はしっかり覚えていたのでカーナビなど使っていなかったので、まさか着いたところがダムになっているなどと思わなかった。


 問題はそのダムは数年で建てられたものではない、昭和の時代に作られたような古くて大きなダムだった。だが、俺は確かにここで育ったはずなのだ。


 ここはどこだ? 一体俺はどこへ居たんだ?


 何もかも分からない。親が俺を追い出したなら分かるにしても、ダムの底から追い出されたとでも言うのだろうか?


 とにかく車を帰らせると、次の平日に市役所に行き本籍地を調べてみた。そこは東京都千代田区千代田1番地になっており、教えるつもりは微塵も無いという意志が感じられた。


 今はもう実家というものがなかったのだと諦めて向上での生活にも慣れた。もうここが故郷でいいと思っている。


 だが、もし自分に実家というものがあるのなら、一度だけでもオヤジを殴っておけば良かったなどと思っている。ダムの名前は○○ダムなんだが、あの辺に集落でもあった歴史はないだろうか?


 メールにはそう書かれていた。名前でダムを検索すると昭和に作られた大規模なことで有名なダムが出てきたが、そこを作るときに村が沈められたようなありがちな話も無かったし、布巾に村などがあった歴史も無い。このメールは迷宮入りとなってしまったが、おそらく本籍地を皇居にしていると言うことは、彼がそれを調べるのも考慮に入れてのことだろう。


 教えたくないことを曝くのに労力を割く気にもなれず、真相は分からないとメールを返信してその件は藪の中となった。

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