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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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丑の刻参りの効果

 その日は寝ているところを大音量の通知音で起こされた。やかましいところにいたので通知の音量を上げたまま、帰って来てもそのままにしていたのをすっかり忘れていた。


 眠かったのだが通知をチェックすると目が覚めてしまった。仕方ないのでPCを起動してメールを見ることにした。


 そこには長文のメールが来ていたが、内容はなんとも恐ろしいものだった。


 俺は昔、丑の刻参りを見てしまったことがある。アレは恐ろしいものだった、二度と見たいとは思わない。


 そんな文から始まっていた。


 ガキだったこともあるのだろう、夏休みの間に夜遊びをしていたのだが、コソコソと補導をしようとしている教師陣を避けるように移動していた。遊べるだけ遊んで解散となったのだが、一人だけ補導なんてされるという貧乏くじを引きたくないのでコソコソ帰っていた。


 そんな帰り道、公園があるのだが横をコソコソ通っていると、カーン、キーン、そう音が響いてきた。


 気にしなければいいのに少し顔を上げてフェンスのスキマからこっそり公園の中を見た。そこにいたのは教師だったのだが、補導をしようとしているのではない。


 頭にLEDマグライトを付けて鬼の形相で公園の大木に何かを打ち付けていた、目立つからだろうか? 白装束ではなかった。


 ただ、あの顔は見ていて怖い以外の感想がない。一目散に見つからないように逃げ出して、それから夜遊びは辞めた。あんなものを見るのはゴメンだ。


 怖いものを見たなんて思いながら這々の体で家に逃げ帰ったときにはホッとしたものだ。


 ただ、翌日の昼間、公園の近くを通ることになり、出来るだけ目を逸らしながら通っていると公園の中を掃除している人が数人いた。


 公園の掃除なんてやりたがる人がそんなにいないのにどうしてこんな人数がいるのだろう? そう考えていると一人が光るものを持っているのを見た。


 始めは刃物かと思ったのだが、よく見ればバールだった。そのバールで何を抜いていたのか、考えるのも恐ろしくさっさと通り過ぎた。


 そうして夏休みが終わったとき、二学期の初めに登校すると、一人の教師が退職したことが分かった。


 本当に後になって分かったことだが、なんでも職場内で不倫していたのがバレて辞めざるを得なくなったらしい。不倫相手はあの時丑の刻参りをしていた女教師だった。怪我人や死人が出たわけではないが、人間の恨みというのはどういう形にせよ、恐ろしいものだと認識を改めた。


 ただ、少し気になるのは丑の刻参りは人に見られてはならないと言うことだが、今に至るまで何の問題も起きていない。このまま放っておいていいものか、今更になって気になっている。


 そんなメールだったが、もう何年も前のことなので問題無いだろう。そもそも丑の刻参りの作法を守っているようにも読めなかったし、多分作法通りにやっていないのだから呪い返しの必要も無いだろう。


 そう返信しておいたが、この場合は呪いこそ失敗したものの、その目的はある程度達成されたと言える。本当に恐ろしいのは人間なのではないかと思わされる一件だった。

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