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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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守ってくれるおばあさん

 その日、私はサブ回線のスマホのバッテリー切れが起きているのに気が付いて、充電器を繋いだ。急速充電が始まるのですぐに起動出来るまでは充電出来た。早速起動させたのだが、起動が終わると通知音が何度も鳴った。


 どうやら通話アプリに着信が大量に残っているらしい。私はそれを見たが、おそらく公開している連絡先への通話のようだった。


 どうしたものかと思っていると通話がかかってきたのでそれに出た。電話の向こうは出来の悪い変声期を使っているのだろう、いかにもな機械音声に加工された人の声が聞こえてきた。


 ただ、礼儀は正しく、どうも匿名で話を聞いて欲しいらしい。そういう話も聞いておこうとそのまま通話を続けた。


 電話口で『私』と名乗ったのだが、何しろ向こうは変声期を使っているので男女の性別は分からない。


 どうやら職場で起きたことを語りたいとのことで、そこでようやく自分が女性であると話してくれた。


 前の職場ではいい大人がなかなか酷いいじめをしていたらしく、新人が入ってくるとすぐに始まるのでさっぱり定着する人材がいなかったらしい。


 そんな現場で人を確保しろと無理難題を突きつけられた。正社員はハッキリ証拠を掴みでもしないと解雇は出来ないし、辞めてもらうのも難しそうだったので、何とかいじめに負けない人材を探すことになった。


 求人にあからさまにアレな職場であることを臭わせておき、それとなくキツい職場であることを理解してもらい、待遇もそれなりにして覚悟してもらうことにした。


 その狙い通り随分とメンタルの強い人材が一人入ってきた。当然のようにいじめは始まったのだが、いじめていた先輩連中が次々と退職届を出してきた。


 その新人が入ってきてからいじめが急になくなって、人材集めに苦労していなかったので構わないのだが、その理由は聞いてみた。


 ただ、それをハッキリとは答えてくれなかった。とにかくやめさせてくれの一点張りで、労働者の権利として辞職を拒否も出来ないのでそれを受け入れ、すぐに彼女たちは来なくなった。


 彼女たちがやめた後、それを知らせると新人の子が『ああ、やっぱり』と言ったので、終業後に何か知っているなら教えて欲しいと言うと、彼女は残ってくれ、話を聞かせてくれた。


「私、守護霊って言うんでしょうか? そういうのが強いんですよね。あの人達がなにかしようとしていたのは分かりましたけど、またおばあちゃんがやっちゃったんだ」


 話を聞いていくと、生まれて間もない頃に自分の誕生を酷く喜んでいた祖母が亡くなり、それから自分を守ってくれているのだという。にわかには信じがたい話だったが、あのしぶとく職場にしがみついていた皆さんが、突然揃ってやめると言い出したので納得はした。


 しかしまあ、彼女の守護霊とやらが本当にいるのだとそれから程なく知った。新人だけで職場をやっていくとどうしても残業などが出てくる。そんな時に彼女に残業を頼むと、その晩夢の中におばあさんが出てくるのだ。何かをするわけでもないが、自分の前に座って恨みがましい目でこちらをにらみ続け、必死にそれに耐えるとようやく目が覚めることになった。


 そんなことが続いたので引き留められはしたが退職をした。彼女を入れたのが正解だったかどうかは分からないが、新しい職場はきついものの安心死手眠れるようにはなったそうだ。


 そんな話をしてくれた。なお、彼女に前の職場のことも聞いたのだが『それはちょっと……』と話を濁されてしまった。


 彼女は変声期まで使っておいて、『くれぐれも匿名でお願いします、あのおばあさんがまたでてきても困るので』と念を押していた。最後に『多分彼女に悪意があるわけではないと分かるんですけどねえ……』と言っていた。


 本人に悪意があるわけではないので自分がやめるのが筋だと思い辞職をし、それ以降は普通に暮らせているのだそうだ。

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