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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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兎小屋にて

 その日は夜中にスピーカーの音で目が覚めた。その日はいつも聞いているラジオが放送しないのを忘れていてアラームをかけっぱなしにしていたのを思いだし、スマホを引っ張ってアラームを止めた。


 ただ、アラームが鳴ったため目が覚めてしまった。今は特番をしているので聞くようなラジオは無い。どうしたものかとは思いつつ、スマホを見ればメールの通知が来ていた。


 私はどうにも肉ってやつが苦手だ、別に宗教だの思想だのがあるわけでは無い。幼い頃の恐怖が未だに残っているだけだ。


 まだ幼い頃、小学校の兎小屋で兎を飼っていた。学校からすれば情操教育のつもりなのだろうが子供からすればただの愛玩動物だ、それが実際に体は汚れるし糞はするしで、ソレがいくら生き物だからと言って気持ち悪がる生徒も多かった。


 さて、その頃学校は荒れていたのだが、いじめに遭っている不幸な生徒が居た。だからといって助けるのもリスクが高いので見ない振りをした、皆がそうしていたような気がする。


 そうしていじめっ子は好き放題やっていたわけだが、いじめられっ子は気の毒にも体に生傷が絶えなかった。気の毒になぁ、とは思うがどうしようも無い、その気の毒な生徒を犠牲にして平穏な生活は送れていた。


 ただ、ある日のことだ。その学期はいじめっ子が生き物係にされていた。皆がクラスで飼っているメダカや兎小屋の兎たちは心配をされていたものの、動物に手を上げるほどのことはないだろうと教師陣は思っており、動物を通じて思いやる心を知ってほしかったなんてことを聞かされたのは後になってだ。


 さて、いじめっ子達が生き物係になってから、今までとはうって変わっていじめっ子達に生傷が絶えないようになった。それもどこか肉が削れているような傷まで負っている。何があったのかと尋ねた生徒には悪態をついて逃げていた。


 そうして教師の思惑通りいじめっ子はおとなしくなったのだが、それでも連中の体には傷が絶えなかった。いつものことだと手当てをして傷を隠すような子もいた。


 そんなあるときのこと、いじめっ子が兎小屋の中で兎と格闘しているのを見た生徒が出た、それが私だ。


 あまり思い出したくもないのだが、いじめっ子は兎小屋で兎に噛みつかれていた。一応兎に反抗しようとはしているのだが、兎の方がすばしっこく、跳びはねては噛みついている。その時に気が付いたのは兎がいくらか成長していることだ。


 つまり兎はいじめっ子達を食べて成長……そこまで考えてゾクリとして逃げ出した。その結果、その学期が終わるまでいじめっ子達は兎にやられ続けたのだろう、傷をしょっちゅう付けていた。


 そして兎たちはすっかり元気で活きのいい、健康的な体格になった。


 どうにもね、あの兎を見るにいじめっ子の肉を食べて成長したんじゃ無いかと思ってるんですよ。だから肉を食べるのに抵抗があるんですよね、ほら、何を食べて成長した生き物か分からないじゃないですか、動物の餌というものがいかに大事なのかよく分かりましたよ。


 ところで、伺いたいのですがお肉を抵抗なく食べられるところはご存じないでしょうか?


 そんなメールだったのだが、私はそっと大手ファストフードチェーンのURLを添付しておいた。そんな極端な例は変えられないが食べてみれば安心出来るかもしれない、そう思って返信したところ、『食べられましたよ、やはりまわりの皆が食べているものと同じものだと考えるとこうも気が楽なんですね』という返信があった。


 その方からの続報はないが、きっと健康的な生活をしているのに違いないと思った。

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