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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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見ている人形

 その時はちょうどイライラしているときだった。そんな時にメールが届いたモノだから、開く前に深呼吸をした。ソレから開こうとしたのだが、開いてみると暗号化されている。わざわざPGPを使ってまで何を伝えたいのだろうと思いながら、私はそのメールを秘密鍵で復号した。


 内容は、昔買った人形がどうにもおかしいと言うことだった。


 私は昔、おもちゃ屋の前でゴネた。その理由はシンプルで、見栄えのいいビスクドールが飾られていたからだ。当時は数字を読めなかったのだが、後になって親に話を聞くと、とても子供には買えない値段だったという。


 そこでゴネたため、子供用の人形を買ってもらった。納得はいかなかったが、多少もんくをを言ってから渋々受け取った。我ながらいい根性をした子供だったと思う。


 それから小学校に上がるまで、その人形で遊び尽した。楽しかった思い出になっているのできっとその頃は人形で楽しんで遊んでいたんだと思う。


 ただ、小学校以降は友人も多く出来、人形で遊ぶことはほとんど無くなった。子供の成長というのはそういうモノだと思っていた。


 しかし当時流行っていた交換日記でおかしな事が起きた。私が書いて友達に渡すと思い切りキレられた。そんな内容を書いたはずも無いのにどうしてと思っていると、どうやら読むに堪えない罵詈雑言が書かれていたのだという。


 もちろんそんなことは書いていないし、誰かのイタズラではないかと言って二人でそのノートを見た。


 すると私の日記の後に友人に対する酷い言葉が書いてあった。確かに書いてあったのだが、その悪口が非常にレベルが低い。まるで幼い子供が喧嘩で使うような語彙に溢れている。


 一応友人には自分でないことは分かってもらったが、交換日記はそこで打ち切りとなった。


 ソレから中学に上がると、私の妙な噂が流れた。私を避けていた一人に声を掛けて聞いてみると、どうやら私が友達から小さなモノをくすねているのだと噂になっていた。


 ただ、くすねているというものが、小さくなった消しゴムだったり、百円で買えるシャーペンだったりしたので証拠もないため責めることもしなかったらしい。


 自分ではないとハッキリ言うと、『そうだよねえ、こんなの盗ってもなんにもならないもんねえ』と納得された。


 大学までなんともくだらないトラブルは多かったのだが、実家から大学に通っていたので生活に困ることは無かった。


 ただ、大学に入って化粧をするようになって気が付いたことがある。鏡を部屋で開くと、必ずあの古ぼけた人形が目に入る。気のせいといえばそうなんだろうし、遙か昔の思い出しか無い人形だ。


 ただ、鏡越しになんだか人形が怒っているように見えた。


 今思えば私がやったと濡れ衣を着せられた悪事はどれも小学生レベルのものだった。そう考えるとその頃までたまに遊んでいたその人形が、思い出の品から恐怖の対象になった。


 とまあそんな訳なので、人形を供養したいのですがいい場所はありませんか?


 私はどう返したものかと悩んだ。そのメールには何処住まいか書いていないので、人形供養をしてくれるところで近くにあるところが分からない。


 ひとまず有名な人形供養をしてくれるお寺を紹介したのだが、後日返事に『半日掛けて新幹線で行ってきた甲斐がありました』と書かれていたので随分と遠方を紹介してしまったのだろう、その返事には多少の申し訳なさを感じた。

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