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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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箱入り娘と縁切り神社

 その日は気分のいい寝覚めだったので、朝に一杯のコーヒーを飲んでから一日のルーティンを始め、全てが順調にいって気分良く帰って来たのだが、その時にメールがPCに届いているのに気が付いた。


 出来れば後味のいい話だといいなと思いながら、一通り着替え、秒で眠れる状態でそのメールを開いた。


 私の実家は酷いものだった。女に権利などないと言う家だったので、伝統がなんだかんだと言っていたが、一刻も早く家を出たかった。その機会は案外早めにやって来て、中学を卒業し、高校に進学したときに女子校に入れたのだが、そこが遠方だったので、渋られはしたのだが女子校と言うことで下宿することを許可された。


 そうして安いアパートを借りての高校生活が始まった。確かに女子校では会ったが男性との出会いもあった、きっとあの頃に正直に話していたら電話越しにキレられていただろうと思う。


 ただ、幸いにも実家は清楚な女子高生をやっていると思っていたのだろう、疑いの目を向けられることはなかった。


 チョロいな、そう思いながら高校生活を送っていたのだが、ある時高校で事故が起きた。ただ単に突沸が起きてやけどをしたと言うだけだったのだが、その場所が悪かった。


 熱した水がいきなり沸騰して試験官から飛び出しただけだったが、飛び出す方向の近くに顔があったので、その生徒は顔にやけどを負った。


 それ自体は綺麗に治ったので心配は要らなかったのだが、それから実家からの帰ってこいコールが始まった。


 高校くらい卒業させろと言いたいのを我慢しながら、適当に話を聞き流していた。向こうは『女の顔に怪我をさせるような学校には置いておけない』という事だったのだが、生徒も傷なんて分からないほど綺麗になったのだから問題無いだろと思った。


 しつこいので適当なところで話を打ち切るようにしたのだが、それが始まってしばし経った頃、高校では時折怪我人が出た。


 打撲だったり、転んだり、一つ一つは些細なことなのだが、それが積み重なってやたら怪我人の出る高校になってしまった。


 一体どうしてこんな事があるのかと思っていると、実家からは怪我人の多く出る高校など辞めてしまえと電話がかかってきた。そこで気が付いたのだが、一つ一つの怪我自体は大したことがなかったので実家に報告などした覚えは無い。


 ではどうして実家の連中はそんなことを知っているのだろう?


 疑問に思ったが、嫌な想像が頭をよぎる。それから少し経ってのこと、怪我人は耐えなかったのだが、それより電話にうんざりしていた。


 そこで高校の近くにあった縁切り神社に参拝をしてみようと思った。実家と縁を切るまでは……と思っていたし、神社を本気で信じていたわけでもないが、試しに神社に行ってみて、なけなしの千円を賽銭箱に入れて願った。


 驚くことに、それから実家からの電話は急減した。そしてたまにかかってくる電話は誰それが怪我をしたというものだった。


 あまり想像もしたくないことなのだが、神社に行ってから怪我人が減って、実家では怪我人が出始めた、これは果たして偶然なのだろうか? 行き場を失った呪いが……


 そこまで考えて止めた。偶然に決まっている、実家が自分に呪いを飛ばしたなど考えたくもない。


 そうして私は高校を卒業したんですが、何とか枠に入れて都市部で働いている。ここまでは良いことだったのだが、付き合いのある人が出来て、彼は私の実家にも挨拶をしておきたいといわれ今は紹介していいものかどうか悩んでいる。


 私にそのメールは来たわけだが、そっと『実家に顔見せをする時代でもないでしょう』とだけ送っておいた。


 奇妙な話だったが、ここに書かれていた縁切り神社が有名なところだったので、向こうの負担にならないように無難な答えを返しておいた。

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