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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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奇妙な思い出と今の生活

 その日は疲れ切っていて、動画を見ているときに寝落ちしたのだが、椅子の上で気が付くとメーラーに数字のマークが付いている。誰かが送ってきたのかと思ってソレを開いたのだが、ある方の思い出が書かれていた。


 そのメールには奇妙な思い出なのだが吐き出しておきたいと言うことだった。


 俺は昔、遊び歩いていた。お世辞にも良い学生とは言えなかっただろう。親兄弟にも迷惑をかけたし、同級生達からは眉をひそめられているような扱いだった。


 それでも良いじゃないかと勝手に思っていたし、どうせそんな連中と同じ大学に行くとも思わない、その場限りの同級生なんてどうでもいいじゃないか。


 そう考えてろくに勉強もせず遊んでいたのだが、ある時のこと暴走族が事故を起こした。その暴走族に入っていたわけではないのだが、事故の噂がなんとも奇妙だった。なんでも先頭のグループが走っていると、突然道路の真ん中に腰の曲がった老婆が出てきたと主張している。


 もちろん彼らがそう言っているだけで、なんの証拠もないし、暴走族が無茶な運転をした結果の事故として処理された。


 ただ、先頭グループで走っていた連中は揃ってそう証言しているらしい。


 それに興味をそそられ、悪友達とそこに見物に行こうと誘ったのだが、暴走族のような『本物』とは関わりたくないと断られてしまった。


 仕方ないので一人でそこに行って写真を撮り、それを連中に自慢してやろうとその夜そこに向かった。もう夜に家からこっそり出ていくことなど何も言われず、良いわけもなく堂々と出て行った。


 そうしてLEDの懐中電灯で前方を照らしながら見物に行ったのだが、そこは人が少なく、カーブも緩やかでスピードが出そうな道だった。こんなところに老婆が出たらすぐ分かるだろうと思っていたのだが、連中の証言を検証したかった。


 そこに向かって行くと、事故現場にはオイルが黒い染みとなって残っている。酷い事故だったんだなと思いながらそこを見ていくと、ある一カ所、前方になんの障害もないのにそこでブレーキ痕が残っており、その先のアスファルトが傷ついている。どうやらここがブレーキをかけたポイントらしい。


 そこを調べると何もなく、やはり先頭で誰かが何かを見間違えてブレーキをかけたのでタイヤがロックしたのだろうと結論がついた。


 そう考えると本当にくだらない事件だったんだなと思いながら帰ろうとした。その時にシュルシュルという音がしたので思わず振り返ると、暗い中でもハッキリ分かる白い蛇が道を横切っていた。そのサイズは缶ビールの直径ほどの太さがあって、どう考えても目立たないはずの無い大きさの蛇だった。


 こちらに頭が向いてペロペロと舌を出してきたのに肝を潰して逃げ出した。確かに暴走族は老人なども見ていないのだろう、きっと見たのはアレなんだ。そう考えると冷や汗が滲んできて、後ろを見ずに必死に走り、ようやく該当の多くなってきた当たりで一安心した。


 そうして本当にバケモノを見たせいか、真面目に勉強するようになって、何とか滑り止め程度の大学に滑り込んだ。それでも先生方はよく頑張ったと褒めてくれたし、親は親で『お前が大学に行くなんてなあ』と驚かれたものだ。


 白い蛇の伝説というのは珍しいが、自分で見ると今も忘れられないのでこうして残しておこうと思う。


 この方のメールにはそう書かれていた。今は結婚して普通の幸せな家庭を築いているそうだが、悪いことをするとあの蛇がやって来そうな気がして今はすっかり善人として評判になっているのだと書かれていた。

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