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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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本当に危ないのは、危ないと分かっていない人なのだろう

 その日はPCでネトゲをしていた。久しぶりの暇な時間に楽しめるのはありがたいことだ。ただ、その時に通知を切ってネトゲに没頭していたので、ダンジョンを終わらせたところで設定を戻すとあっという間に通知が鳴り始めた。


 どうやらメールが来ているらしい、通知をオフにしていたことが正解だったなと思いメールを開いた。どうやら怪談のようだが、なんだか奇妙な人から送られてきていた。


 俺は宗教なんて信じていなかった。別に蹴飛ばそうと思えば地蔵を蹴飛ばすのだって怖くないし、神社に忍び込むのだって平気だ。


 時には賽銭道路坊だってしたし、祭の時期に張ってある注連縄から御幣を引っ張るのだって平気だ。


 それでも全く悪いことなんて起きていない。昔から折り合いの悪かった親戚が左遷されたということで近所からいなくなってくれたのにはせいせいした。


 飼っている犬の声帯に異常が見つかって、鳴くことが出来なくなった犬になったときも夜中にうるさくなくなって良かった。


 親友だと言っていたいけ好かないヤツが高越事故に遭ったときなど拍手をしたくなったモノだ。


 何が祟るだの、呪われるだの、罰があたるだ、こんなに酷いことをしていてもまわりでは良いことしか起きない。


 この前はお札を拾ったので川に投げ捨ててやろうと思い財布に放り込んでいたら、思い切り財布ごとお札を川にぶん投げてしまった。まあロクな金額も入っていない小銭入れなので気にすることも無いだろう。


 車検があったとき、運良く自分の車が般くてしていたのが見つかった。本当に空気が抜けそうな状態だったらしい。運の良いタイミングで見つかるモノだと嬉しかった。


 だから信仰心のない行動をしたところで、お天道様が見ているなんて嘘っぱちだし、悪人が世に憚って何が悪いというのか?


 結局世の中ローカルルールに縛られるなんて無駄が好きなやつのすることだ。嘘だというなら俺に何か罰を当ててみて欲しいもんだ。


 そんなくだらない日々を過ごしていたとき、家に自称霊能者が来た。霊能者なんて言っても近所で視えていると言われているタダのおばさんだ、何かが分かってたまるか。


 あの婆さんは、今すぐ生活を改めないと大変なことになる夜なんて言っていた。今まで少しでも大変なことになったか? ばかばかしい、所詮は町内の誰かに言われでもして俺を止めに来たのだろう。くだらない、そんなものをこの二十一世紀になって四半世紀経とうというのに信じられるものか。


 こんな嘘だらけの迷信を信じているヤツがいることに驚きしかない、ここは霊体験を送るフォームらしいが、こんな風に何の被害もないことが普通なんだ。どうせ不安を煽るのが目的なんだろう? 神や仏が俺に手を出したり出来ないのを適当に誤魔化しているだけだ、アンタは霊なんて信じているそうだが現実はこんなもんだ。


 そう書かれたメールを見て、しばし画面の前で表情が固まってしまった。返信をしようか悩んだのだが、この方がどうせ聞いてくれるはずが無いと諦めてしまった。


 ここまで何かが起きていても当の本人には何も感じさせない、神仏が罰を与えるというのは、相手に理解出来る形であればまだ優しいのだろうと考えてしまうばかりになった。

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