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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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明るいアパートで

 その日は夜遅くまでメールに返信をしていて眠気が溜まっていた。ぼんやりそのままいつの間にか寝てしまい、朝になると気分よく目が覚めた。


 珍しくスッキリしたなと思っているとPCを見たときに大量のメールが来ていた。どうして気が付かなかったのかと思うと、見れば隅の方に表示されているスピーカーのマークがミュートになっていた。どうやら寝る前に無意識にミュートにしてしまっていたらしい。


 気づかなかったのに申し訳ないなと思いながら開いたところ、一つ一つのメールは短文が載っているだけで、それが全部のメールで繋がって一つの話になっていた。メールに慣れていない人なのかなと思いながら読んでいったのがこんな話だ。


 都会に出てきて良かったと思っていた。長い間息の詰まるような田舎に住んでいると都会の空気が気分が良い。もちろん田舎の方が健康にいい空気なのだろうが、こちらの空気には自由さが感じられる。実家のあたりには流れていない雰囲気だった。


 そうしてその日もアパートに帰って来た。バイト代の高さも結構に感動した。三桁の最低賃金で働かせるのが当然だったのはなんだったのかと思ってしまう。


 楽しい気分のまま部屋に帰ってきたのだが、いつものアパートに帰って来たはずなのに何故かその日は蛍光灯が点いていた。きちんと出かけるときにオフにしたはずだったんだが、そう思いながらもそのまま過ごし、夕食にゼリー飲料を飲んで自分の腹を誤魔化しながら寝た。


 ところが翌日になると光で目が覚める。太陽光ではない、何か真っ白な光が自分の上から降り注いでいる。なんだと思いながら体を起こすと蛍光灯が煌々と光っていた。


 おかしい、いくら何でも昨日オフにしてから寝たはずだ。壁のスイッチに目をやると、昨日の自分の記憶と違って蛍光灯が点灯するようになっている。どう考えてもおかしいのだが、ここのところ疲れていたから覚えていないうちにやったのだろうと蛍光灯を切ってその日も出かけた。


 ところがその日から定期的に蛍光灯が勝手に点灯するようになった。気味が悪いとしか思えないのだが、何かしたかと言えば覚えは無いし、その部屋も曰く付きというわけではない。


 おかしいなと思いながらもそのまま生活していると、ある日不動産の管理会社から連絡が入った。


 それによると夜遅くに友人を招いたりしていないかとのことだった。こんな六畳間に友人を招かなくても遊ぶところは沢山ある。あえてここを選んで友人を呼ぶ理由も無い。そこでそんなことはしていないというとあっさり理解してくれたのか話は終わった。


 ところがそれからも時々似たような電話がかかってくるようになった。自分が何かよくないことでも、知らずにしているのかと思い尋ねてみたところ『いえ、生活に支障がないのであれば気にしないでください、他からクレームがは言ったわけでもありませんから』と言われた。


 多分この部屋には何かあるのだろう、それは勘の悪い自分でも分かる。だが住めるところなんてお金との兼ね合いで考えると引っ越す気にもなれない。そのまま暮らしていこうと決めて今もそこで暮らしている。


 あなたは事故物件を調べたりできるんじゃないか、何にせよ引っ越す気はないが事故物件だったら教えて欲しい。


 最後にそう書かれており、住んでいるアパートの住所と名前が書かれていた。知っている限りのサイトなどで検索をしてみたのだが、この方のアパートは全く引っかからなかった。おそらく何かはあるのだろうが真相は不明のままだ。


 一応メールで何も見つかりませんでしたと返信はしたのだが『じゃあいいです』と素っ気ない返事が返ってきた。おそらく彼は今でもその部屋で生活しているのだと思われる。不動産屋に聞けば何か分かるかもしれないが、無関係の私に教えてもらえるはずもなく、結局そのアパートの話は謎のままだ。

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