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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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その部屋の過去には……

 その日は割と気力があったので、メールチェックをして面白い話がないかと浮ついた気分だった。しかしそんな日に限って何もない。


 諦め気味で夕食に買ってきた弁当を食べてからメールをチェックすると一通届いていた。なんとも言えない怖い話が書かれており、期待もしてみるもんだなと思った。


 私の住んでいるアパートなんですが事故物件なんです。あまり詳しくは言えないんですが実家と折り合いが悪いので無理して家を出たのでそう言う物件くらいしか入れなかったんです。


 そう書かれてから奇妙な出来事達が書かれていた。


 始めはなんだか部屋の中が湿っぽいことから始まった。偶々買っていたポテチを食べていたところ、トイレに行って帰ってきたらそれが湿気っていた。ポテチが湿気るのは仕方ないが、いくら湿度が高そうでもトイレに行って帰る時間に湿気るのはおかしい。


 少し考えてから嫌な感じを覚えたのでポテチはもったいないがゴミ箱に捨てた。それは始まりのことだった。


 それから部屋のタンスに足をぶつけたり、狭い中寝ているのに暖房をかけていてもやたらと寒い。その上エアコンから変な匂いが漂ってくるのだからたまらない。


 それでもお金が無い身として安易に引っ越すことも出来ない。どうすればいいのか悩んで部屋に盛り塩をしたこともあったのだが、翌日には真っ白だった盛り塩が濁ったゲル状になっていて、臭いまで酷い物になっていた。その時に使ったのは安い方が良いからと塩化ナトリウム百パーセントの塩にしたのでそんな腐り方をするはずがない。


 とにかくそれを流して盛り塩は諦めた。どうしろというのか悩んだのだが、引っ越せないので不動産屋にここで具体的に何があったのか尋ねた。事故物件だと聞いてはいたが、選ぶほど余裕がなかったので何があったかは覚えていなかった。


 問い合わせの回答としては、その部屋でペットのブリーダーをやろうとした男がいて、当然アパートの一室で出来るようなことではなく、多くの犬が犠牲になったそうだ。助かった犬も怯えきって酷いものだったという。


 その時点で嫌気がさして引っ越したくなった。ただ、試しにドックフードの少しいいやつを買ってきて部屋の隅に置いておくと、翌日には舐めとったかのように綺麗に空っぽになっていた。


 そうしてドッグフードを供えた翌日は怪奇現象が起きなくなったのだが、グルメなのか舌が肥えたのか、ドッグフードをえり好みするようになってお財布に少々厳しいことになってしまった。


 この方は犬を除霊する方法って無いでしょうかと書かれていたが、最後に付け加えるように、お金は一円も出せないんです、と書かれていたのでお手上げだった。


 丁寧な文章で住み続けたいならお金を貯めましょうと送るほかない。メールに返信はないが、彼女が無事に平穏に暮らせていることを願っている

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