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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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かつてアパートがあった場所

 その日は眠くてイライラしていた。しかしそんな日に限って眠れないので、不健康な生活の見本のようにスマホを脇に置いてPCで動画を流していた。そんな時に届いたメールだ。


 昔の話ではあるんだが、何かと嫌な思い出なんでアドバイスをしてくれませんか?


 もう相当昔だが、地元でバイトを探していた。就職するのが嫌でその日暮らしをしていたのだが、そろそろ真面目に働こうかなと思い、休みの多いバイト先を選んで就活をすることにした。


 ただ、よく考えれば週に二日で生活が出来るほどの金額をもらえるのは何か理由があるだろうとは思わなかったのがよくなかった。


 その仕事は近くのアパートに住み込みで、住人から要望があったら対応してくれということだった。無理な要望は出ないからと言われ二つ返事で雑用だろうと引き受けたのだが、そのアパートに土日泊まるようになってから変な要望が飛んできた。


 時には廊下に水が溜まっているので掃除しておいてくれと言われ、軽いものだと思ってぞうきんを持って行くと、悪臭を放つ汚水と思われるものが廊下に貯まっている。急いでモップをとってきて鼻をつまみたくなるような臭いのそれを綺麗にした。


 ある時には住人が卵のパックを処理してくれと言ってきた。買ってから随分経つので腐っていると思われるが、老体なので割ってしまうと酷いことになると言われた。


 卵を捨てるだけだろうと思いその部屋に行くと、爺さんが出てきて紙の卵パックに入ったものを渡された。それをゴミとして捨てるとき、ついそのパックを落としてしまい中身がどうなったか確認すると中の卵のいくつかは割れていた。中からは腐敗したものがはみ出てはいた……しかし……


 それはヒヨコの体が卵からはみ出していた。いくら学がないと言っても店で売っている鶏の卵が無精卵で温めても雛がかえらないことくらい知っている。だというのに複数個の卵から雛がはみ出ているようだった。


 慌てて処分して部屋にこもると電話がかかってこないことを祈りながら過ごした。そうして一月ほどもそのバイトを続けると、週二日、経った月に八日過ごすだけでも耐えられない空間になっていたのでバイトを辞めることを申し出た。あっさりそれは引き受けられたのだが、無駄だろうというのを隠そうともせず、バイト代を倍にするから次が見つかるまで頼めないかと言ってきた。


 断っても案の定という表情をしていたのであそこが何かの曰く付きなのはよく知っていて頼んだのだろう。ただ、あのアパートが事故物件だという話は昔から聞いたことがないし、たまに住人とすれ違ったときも感じのいい人だったことがある。


 もうあそこで何があったか分からないのだが何か分かったら返信して欲しい。


 そう書かれ、その曰く付きの場所が書かれていた。そこを検索してみると高いフェンスに囲まれたため池になっていた。いくら危ないにしても写真に有刺鉄線が見えるのはやりすぎのような気はしたが、結局返信出来るような情報は見つからなかった。

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